天理時報2023年3月1日号8面
【国際大会で金メダル獲得 – 天理大空手道部 橋本大夢選手】橋本選手は「KARATE1シリーズAアテネ大会」に出場し、国際大会初優勝天理大学空手道部の橋本大夢選手(4年)は、1月13日から15日にかけてギリシャ・アテネで開催された「KARATE1シリーズAアテネ大会」男子組手競技60キロ級に出場。海外選手との戦いを制してトーナメントを勝ち上がり、金メダルを獲得した。父が会長・師範を務める道場で3歳から空手を始めた。二人の姉も空手選手。高校では県大会個人組手競技で3位入賞した。高校時代、監督の指導のもと、3年へ進級する際に「組手」の構えを右構えから左構えへ変更。「慣れたらとても戦いやすく、『組手』に今後の伸びしろを感じた」と話す。天理大3年時、「近畿地区空手道選手権大会」で3位入賞すると、昨年3月の「2022年シニア強化選手選考会」で準優勝。さらに、6月の「全日本空手道体重別選手権大会」で全国大会初優勝を果たした。得意技は「刻み突き」。相手選手のプレーを分析し、弱点や隙を見つける戦い方を得意とする。2022年12月、海外の大会に出場。ウズベキスタン・タシケントで開かれた「WKFアジア空手道選手権大会」シニアの部で銅メダルを獲得した。「WKFアジア空手道選手権大会」では銅メダルを獲得したこの大会の経験から「突き技の隙を減らし、正しいフォームで突く」練習を繰り返し、「シリーズAアテネ大会」に挑んだ。4連勝して臨んだコート決勝では、橋本選手よりも約20センチ身長が高いトルコの選手と対戦。リーチ差に苦戦しながらも1ポイントを先取。その後、2‐2の同点に持ち込まれたものの、先取勝ち(試合で先にポイントを取った選手が勝利する)で決勝トーナメントへ進んだ。その後は、準決勝を3‐0、決勝も「刻み突き」や「前拳」「逆突き」の連続技などでポイントを奪い、8‐1と圧倒。国際大会初の頂点に立った。なお、この結果を受け、世界ランキングが85位から27位へと上昇。32位以上の選手が出場できるプレミアリーグへの出場資格を手に入れた。橋本選手は「監督や先輩方、仲間たちの協力に感謝している。試合では勝ちにこだわりすぎず、楽しんで戦うことができた。その結果、優勝できて、お世話になった方への恩返しにつながったと思う。ここからが新たなスタートライン。もっとポイントを稼いで、世界ランキングの上位を目指す」と語った。◇なお、「WKFアジア空手道選手権大会」には、同部の笠谷純行選手(1年)も出場。男子U‐21の部組手競技84キロ級に出場し、3位決定戦を2‐1で勝利。銅メダルを獲得した。笠谷選手は「とても緊張したけれど、3位に入れて良かった。しかし優勝はできなかったので、満足のいく結果ではなかった。今後も国際大会に出られるチャンスをつかみ、結果を残していきたい」と話している。, 【第39話 受け取った物を、また別の誰かに贈る – ふたり】前話のあらすじ秋が近づいた満月の夜。カンとハハは一緒に海に出た。ボードにまたがり、水を切って進むカンの手は、あのときの父と同じくらい大きくなっていた。第38話 新しく生まれ、はじまるもの今年も棚田の稲が黄金色に実った。ここに来ると、きまってツツのことを思い出す。小学校の体験学習で田植えをしたとき、カンはポケットから取り出した緑色の小さなカエルで彼女を驚かせて、田んぼに尻もちをつかせた。梅雨明け間近の田んぼでホタルを見たとき、ツツはあまりの数に圧倒されて言葉を失った。そしてカンから受け取ったホタルを、両手に包んだ指のあいだから覗き込んでいた。一つひとつの光景が、まるで昨日のことのように思い出される。東京へ帰っていった彼女が、これからどんな人生を歩むのか、わたしにはわからない。とりあえず毎晩、ぐっすり眠れるようになればいいと思う。さらに個人的な希望としては、カンとツツが保苅青年とのぶ代さんのようになってくれればいい。しかし犬にもいろんな事情があるように、人間の場合にはさらに複雑で厄介な問題があるのだろう。ツツがいないかわりに、すっかり元気になった新太が稲刈りに加わった。のぶ代さんが言うには、新太は一冊の絵本に救われたのだそうだ。全身麻酔で手術を受けているとき、夢のなかに、彼が好きだった絵本のキャラクターが出てきた。オランダという国で生まれたウサギらしい。その絵本が新太は好きで、のぶ代さんは毎晩のように読んでいた。「そしたら出てきたんだって。手術のあいだベッドのそばに立って、ずっと見守ってくれていたらしいの。あらためて絵本って偉大だなと思った。空想か現実かとかいう問題じゃない気がする。あの子がいる世界には丸顔のウサギも一緒に住んでいて、苦しいときもひとりぼっちじゃなかった。そういう気持ちにさせるところが作品の力だな」つまり新太にとっては、そのオランダ生まれのウサギが、ハハにとってのトトみたいなものなのだろう。違うかもしれないけれど、そういうことにしておこう。「田んぼや畑の土を掘ると、表面から二十センチが黒い土で、その下に黄色い土や砂があります」。農家の人が体験学習でやって来た小学生たちに説明している。「黒い土は、わたしたちの先祖が堆肥やレンゲや菜の花などの緑肥を施し、わらや野菜くずを入れて耕しつづけてできたものです。言ってみれば、先祖が蓄えてくれた貯金なのです。しかし何年か耕作をやめれば、彼らが苦労して作ってくれた田んぼや畑も、すぐに荒れ地に戻ってしまいます。だからわたしたちは大切に、この棚田を守っていきたいと考えています」保苅青年がツツに話していたことを思い出した。自分というものは、どこかからもたらされたものだから大切にしなければならない。人が生きることは贈り物を受け取り、受け取ったものを大事に耕して、また別の誰かに贈ることなのかもしれない。