天理時報2021年10月6日号5面
こうした思いを抱えていたとき、動物介在療法の一つである「ホースセラピー」を知り、「長年、馬と関わってきた私にとっての、新たな役割が見つかった」(コラム参照)。平成25年、「ホースコミュニティ」という団体を立ち上げ、「サンクスホースプロジェクト」事業を展開。ホースセラピー用馬や乗用馬などになるためのリトレーニング支援をしながら、受け入れ先とのパイプ役も務めた。「ホースセラピーを通じて、精神疾患のある子供の表情がだんだんと明るくなっていく様子などを伝え聞いたとき、自身の活動が人のたすかりにつながっていることを実感した」こうして競馬界の内外で華々しい活躍を続ける間も、布教所の月次祭に参拝した。父・実敏さんが緑内障を患ってからは、角居さんが祭文作成や祭典後の講話を担当。あらためて教理を学ぼうと、教義書を買い求め、教えの理解を深めた。そんななか、布教所につながる信者の多くが高齢となり、「いずれ布教所に戻って、これまで布教所を支えてきてくださった人たちの恩に報いたい」との思いが募った。同じころ、調教師としての進退に考えを巡らせるように。周囲からは、さらなる活躍に期待が寄せられる一方で、「調教師としては限界を感じていた」。また、従業員の今後を思い、自身のやり方以外にさまざまなことを吸収する機会を持ってほしいと考えるようになった。「調教師として勤める中で、『人さまのために』と思う心に親神様がお働きくださるたびに、私自身の心が大きく動かされた。今後は布教師として、信仰の感激をもっと味わえる道を歩みたい」こうして3年前、厩舎の解散を決意。多くのファンに惜しまれつつ、今年2月に引退した。経験を生かし馬と共に”引退表明の直後、かねて親交があった講談師の吉松洋一郎さん(4歳)から、妻が「脳腫瘍」と診断されたことを打ち明けられた。病状は悪化する一方で、医者も手がつけられない状態だという。布教師を志して間もない相談に、親神様・教祖のお導きを感じた角居さんは、「天理教では人をたすけてわが身たすかると教えられる。一緒に人だすけの道を「通らないか」と提案。日を合わせておぢばへ帰り、初席を運ぶ世話取りをした。さらに昨年、滋賀県栗東市の自宅からおおばまで80㌔の道のりを単身で徒歩帰参し、本部神殿で身上のたすかりを願った。こうした角居さんの信仰姿勢に感銘を受けた吉松さんは現在、夫婦で別席を運んでいる。また、自らの経験を生かして〝馬と共に歩む取り組み”にも着手。「サンクスホースプロジェクト」を「サンクスホースプラットホーム」と改め、行き場のない馬の居場所として、石川県珠洲市の集落に厩舎を建て、馬を介して人とつながる場をつくることを目指している。「こんにちは、天理教の布教師です。よかったら読んでください」吉松さんが路傍講演をする傍らで、通行人に頭を下げ、リーフレットを手渡す。「いまも街頭に立つのは緊張するし、一人でにをいがけができるほどの勇気は、まだない。しかし、自分にできるにをいがけ・おたすけを模索しながら、〝信仰の感激を味わう道を通りたい」当面の目標は、布教所に住み込む青年と共に能登半島内の住宅を北端から全軒戸別訪問すること。親神様・教祖に導かれて歩む、角居布教師の新たな道は始まったばかり。文・動画=加見理一QRコードから、角居さんのにをいがけの様子などをご覧いただけます。天理大馬術部で、馬の健康状態の確認や部員への指導も行う(5月27日、同部厩舎で)COLUMNホースセラピー「ホース・アシステッドセラピー(=ホースセラピー)」は動物介在療法の一種。乗馬や飼育体験など馬との触れ合いによって、精神状態や運動機能を向上させる効果が期待されることから、近年、障害者や精神疾患を抱える人へのリハビリテーションの方法として注目されている。天理大学馬術部でも、昨年8月からホースセラピーの活動をスタート。同部の外部コーチを務める角居さんは、毎月のおぢば帰りの際に同部へ赴き、馬の健康状態の確認や部員への指導を行っている。