天理時報2021年4月11日号8面
天理時報90年記念創刊懸賞エッセ入選作品テーマかしもの・かりもの」を心に上田秀昭54歳・京伯分教会長・鳥取県米子市「理を振る」という思案教祖が十二下りのお歌に節付けと振付けをされたとき、「これは、理の歌や。理に合わせて踊るのやで。ただ踊るのではない、理を振るのや」(『稿本天理教教祖伝』)と仰せられた。けれども、その「理を振る」というお言葉の意味するところが、物心ついてからしばらくは、さっぱり分からなかった。25歳のとき、映画館で『ジュラシック・パーク』を観た。エキサイティングな映像もさることながら、劇中で「北京で蝶々が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起きる」という「バタフライ効果」について語られたセリフが、なぜかずっと頭から離れなかった。そこで、「蝶々」の部分を、「てをどり」にスライドさせてみた。すると「十二下りのお願いづとめを勤めるときの、てをどりのひと振りひと振りで、遠くで暮らす友人の病気をたすけることができる」という言葉が思い浮かんだ。さらに、偉大な指揮者など、第三者に力を及ぼすときに、何かを「振る」ことも連想した。おつとめを通して理を振る。すると手の先から小さな風が起こるように理が吹く。同時に足を踏む。そこからわずかな風が舞い上がるようにして理が吹いていく。私たちは「神のからだ」に懐住まいをしているため、この世のあらゆるものとつながっている。吹いた理は遠く離れた病人の枕元へ瞬時にして到達し、その人の身体を優しく包んでくれる。願い人の心が誠真実であれば、神様がその心に乗って働いてくださり、病人はきっと、たすかる50歳のとき、「脳梗塞」になった。教会で、信者さん宅で、また大教会や教務支庁でも、たくさんの方がお願いづとめを勤めてくださった。いま思い出しても、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。おかげで、わずか2週間で退院。一時は左腕にしびれが残り、真っすぐ歩くことさえ困難だったが、いまでは後遺症も全くない。「理を振る」という言葉を自分なりに悟ってからは、おつとめの時間をより大切にするようになった。教会にいるときは、できるだけ十二下りのお願いづとめを勤めさせてもらっている。このひと振りひと振りで人がたすかると思えば、これほど陽気な踊りはない。ただし、真剣さは決して忘れない。教祖が仰せられたように、ご守護いただくための誠真実をお供えしなければ、何にもならない。「みかぐらうた」を噛みしめながら、実際に教えを守って通ることを自分に言い聞かせる。神様が、それを真実と受け取ってくださったならば、きっと理を吹かせてくださるだろう。新型ウイルスが流行し、おたすけの現場でもテレワークが求められる時代。直接おさづけを取り次ぐことができず、もどかしさを感じることもあるが、私たちにはおつとめがあることを心丈夫に思う。(要旨)手嶋龍一のグローバルアイ米中対立のはざまで台湾海峡のうねりが徐々に高まっている。米中の対立が厳しさを増し、国際政局の波がここに及んでいる。一片の外交文書だけで地域の平穏を保てるわけではない。それでも1972年に米中が交わした「上海コミュニケ」は、台湾と中国大陸を隔てる海峡を半世紀にわたって波穏やかに保ってきた。米国政府は「台湾問題の平和的解決を求める」とクギをさし、「一つの中国政策」を支持すると述べて、米中の安定した関係の礎を築いたのだった。だが、中国政府はその後も台湾の武力解放の主張を取り下げず、一方のバイデン政権も民主党の新綱領から「ひとつの中国を支持」というくだりを削ってしまった。米中和解の土台が次第に崩れ始めているのである。バイデン政権の発足後、アラスカの地で初めて行われた米中の外交協議は、両国の対立が険しくなっていることを際立たせた。ブリンケン国務長官とサリバン国家安全保障大統領補佐官は、楊潔麗政治局員と王毅外相に激しい口調で詰め寄った。米側はウイグル、香港、台湾への中国の攻勢を非難し、中国側は「内政干渉だ」と一歩も譲らなかった。米中ともに、互いの国内に強まる反中、反米の感情を意識し、敢えてテレビカメラの前で1時間にわたってやり合ったのだった。バイデン政権の外交チームはアラスカ会談に先立ち、日本で「外務・防衛閣僚協議」を行い、韓国も訪れている。対中包囲網を敷いたうえでアラスカ会談に臨む周到さだった。まず先制攻撃に出て、その後に中国側を対話の土俵に誘い込もうとしたのだろう。だが、中国側がアメリカ側の読み通りに動く保証はない。菅総理は4月ワシントンに飛び、バイデン大統領と初の日米首脳会談に臨む。台湾海峡で不測の事態が起きれば直ちに日本の安全が脅かされる。台湾有事の勃発を外交の力で未然に防ぎ止めることこそ日本の責務だ。Profile外交ジャーナリスト・作家。NHKワシントン支局長として911テロ事件の連続中継を担当。代表作に『ウルトラ・ダラー』『スギハラ・サバイバル』、『外交敗戦』、最新作に『鳴かずのカッコウ』など多数。