天理時報特別号2021年7月号3面
「ケースなしでお使いの方に多い現象なんです」さすがはプロです。「でも、それだけが原因ではないかもしれませんから、度そうなったら、再起動するなどして様子を見てください。直らなかったときは、また、いつでもお越しください」優しい店員さんは、そう言ってニコニコと笑ってくれました。私は、恥ずかしいやら情けないやらで、肩を落として、ほうほうの体でショップをあとにしたのでした。帰りながら考えました。私たちは日ごろ、こちらの声が届かないのを相手のせいにしたり、環境のせいにしたりすることはないだろうか。私も子育ての最中に、よく「何十回同じことを言わせるんだ」という怒り方をしました。でも、そういうときは「伝え方が間違っていないだろうか」と、もう一度考え直してみる必要があるのかもしれません。もしかしたら、子供と通話するマイクに蓋をしているのは、こちらの心かもしれないのです。子供が同じことを繰り返すのは、「その伝え方では何も伝わらないよ」という、はっきりとした返事を、態度として表しているのかもしれませんよね。そういう場合は、伝え方を変えてみるべきなんだな。しかも、「ちょっと小指をずらすだけ」くらいのことでいいのかもしれないな。そんなことを考えているうちに、私の恥ずかしい体験も、まんざら役に立たないこともなかったと、少し気が晴れてきたのでした。絵おけむらはるえ私の好きな表紙風のはな景し西薗和泉IzumiNishizono「放置された自転」車たぶん誰も気に留めないと思いますが……….。細い路地の古いレンガや板壁の前にあったサビついた自転車は、僕にとって格好のモデルです。写生場所・・・・・・徳島市にしぞの・いずみ1960年、奈良県天理市生まれ。84年、京都市立芸術大学油画科卒業。2021年まで天理中学校美術教諭を務めた。著書に『木かげと陽だまり―水彩こころの覚え描き』(道友社)刊がある。