天理時報特別号2021年6月号3面
いまは看護師としての勤務も9年目を迎え、同じ市内でレスキュー隊として活躍する消防士の男性と結婚して、育児と仕事に追われる幸せな毎日を過ごしています。高校時代、大好きだったバレーを辞めると聞いたときは私も心配しました。新しい目標ができて勉強に励んでいる姿を遠くから眺めつつ、娘の幸せを願うばかりでした。人生には、いくつかの節目があります。植物にたとえるなら、風雪にさらされて折れるのも節ですし、厳寒の冬を乗り越えて、春に新しい芽を吹くのも節からです。この違いは、どこにあるのでしょう。それは、植物が養分や水分を、いかに多く蓄えているかという点ではないでしょうか。人生もこれと似ています。先祖が子供や孫、曾孫のために積んでくれた、目には見えない魂の徳。これが畑となり、そこに自分が「感謝」という種をどれくらい蒔いて、どのように芽を育ててきたか芽を育てるとは、逆境を人のせいにするのではなく、自分の心の汚れを拭い去るチャンスにするということです。こうした条件が整えば、困難な節に出合っても折れることなく、やがてそこから芽を出し、花が咲いて実がみのる。神様はS子に、それを経験させてくださったような気がします。「あのときバレーを続けていたら、いまごろどうなっていただろうね」S子は、こう答えます。「おそらく看護師にはなっていないと思う」「じゃあ、いまの幸せは味わえていないかな」「うん、たぶんね」「それなら、あのコーチはS子にとって恩人だ」「私もそう思う」若い時代に人生を考える節を与えてくださった神様と、憎まれ役になってくれたコーチの先生に、親子で感謝している今日このごろです。イラストレーション:西村勝利私の好きな表紙風のはな景し西薗和泉「泰山木(タイサンボク)」初夏に白く大きな花を咲かせます。蕾の状態で花瓶に活けると、咲かずにしおれたり、咲いても、すぐに花びらが茶色くなります。芳香を放つのもわずかな時間です。それだけに、開花の瞬間に立ち会えたときの喜びはひとしおです。写生場所・・・・・・自宅にてIzumiNishizonoにしぞの・いずみ1960年、奈良県天理市生まれ。84年、京都市立芸術大学油画科卒業。93年、パリで水彩画個展。現在、天理中学校美術教諭。