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“人生の味”が引き立つのは


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冬。筆者の住む地方の山あいは、見渡す限り黄色いミカンで覆われます。これ全部、誰が食べるのだろうと、たわいもない想像をしてしまいますが、食卓やリビングで大切な人との語らいに彩りを添えるのでしょう。

本当に甘いミカンは、ただ甘いだけではありません。よく味わってみると、酸味に支えられているのに気づきます。これはぜんざいなども一緒で、いくら砂糖を入れても、ただ甘いだけ。ぼやけた甘みでしかありません。そこに塩を入れると、甘みに輪郭が生まれ、はっきり甘いと感じます。塩そのものは辛いだけなのに、味覚とは不思議なものです。

人生もこれと同じ。ただ幸せなことが多いだけでは幸福感がぼやけてしまう。つらい出来事が少し入ることで、はっきりとした輪郭を伴った幸せを実感できるように思います。

つらい出来事の最中は、もう前を向けないかもしれない、とさえ思いますよね。でも振り返れば、それは、確かな幸せの輪郭づくりに役立っているのかもしれません。

Cha