新春歌壇(1月5日号) – 植田珠實 選
あら玉の年を頂くよろこびに
九十八歳さづけ取り次ぐ
東京都 小松孝
卒寿越え会いし事なき初春の
知らない私に逢える楽しみ
伊勢原市 宇佐美正治
新春の改札口にあふれくる
人みな家のぬくもりを曳き
呉市 月原光政
じれったいなかなか入れぬおたすけに
入院患者は面会謝絶
秋田市 髙橋重雄
じゃんけんで赤子のお繦褓取り替える
親子三代雪の正月
甲賀市 岨中幸男
退院して正月養生する妻の
替着とどける雪の晴れ間に
石川県 岩城康徳
手短に済ましし一人の食卓に
慣れし旧年明けて妻とゐる
秋田県 鎌田正男
水盤に千両若松生けてある
山茶花の花もそっと添えたり
福山市 藤井光子
寅年はよき年になるを願いこめ
助けたまえとお手ふりをする
天理市 川北昭代
初詣で終へて二人は仕事場へ
脱ぎし長着にぬくもり残る
奈良市 豊口智子
寒い日はコーヒーカップを手で囲い
母に叱られた日を懐かしむ
宇佐市 三好秋美
早々と免許返納した妻は
自転車漕いで颯爽と行く
玉野市 藤原良用
怖がりの兄は飛車を可愛がり
王様いつも一人ぼっちに
大東市 中西おさむ
健忘の吾の脳に燦燦と
新年のひかり射しおよぶなり
高槻市 石田たまの
おことばは神意の筆に生かされて
日にち帰依す慶びの朝
八尾市 伏田和子
新春選者詠
懐かしき声の満ちくる親里に
穏しき祈りの春の風ふく
次回は、1月末までの到着分から選歌。投稿は短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
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