時報歌壇(2月22日号)- 植田珠實 選
老いゆけば生きる世界はせばまれど見よ大空へ飛び立つ鳥を
横浜市 及川秀代
サンドイッチを作る仕事が決まりたる妻はカレンダーに〇を付けゆく
神戸市 足立國雄
節電で暮らしは昭和へバックするコタツ、半天、少し戸を開け
ふじみ野市 酒井笑子
昭和の母が継ぎしズボンを懐かしみ妻の不在を自らが縫ふ
秋田県 鎌田正男
クリスマス寒波に震へ飲むくず湯先づ掌が温もりてくる
東村山市 加藤八重子
凍結を解かれて重き目をひらく砂じろ鰈のぬめる午後四時
呉市 月原光政
ほろほろと花びらこぼす山茶花の傍へアイリス丈を伸ばせり
高槻市 石田たまの
霜焼けの互いの小指ふくれたるグッパーしたり足湯をしたり
熊野市 福山久美子
東京より帰りし孫のお土産は私に似合うピアスがありて
福山市 藤井光子
日展の絵画に出展してみよう米寿迎えて今年は跳べる
川崎市 木村道治
淋しげな母の横顔浮かび来る何の悩みがあったのだろう
宇佐市 三好秋美
とうさんの遺影はにっこり笑ってるだから私はもう泣かないよ
西宮市 藤田さよ子
「和」の名をもらひし父祖によろこびを伝ふ山里 冬日あかるし
八尾市 伏田和子
方言を丸出し話す人は逝きふるさとがまた薄味になる
所沢市 岡田陽一
悲しみを言葉あつめて歌に詠むいとしき人に届けと願い
京都市 寺澤幸子
選者詠
きさらぎの地震に毀れし土耳古にて救ひださるる少女をみつむ
【評】
及川さん
長く生きているからこそ大空へ飛んでいきたいものです。智慧と勇気をもって、ほら、今年こそ。
足立さん
新しい仕事が決まるのは、いくつになっても嬉しいものです。今年は兎の年。楽しく跳べますように。
酒井さん
懐かしい昭和が、どこか我々の生活に戻ってきた気もする昨今ですね。
次回は、4月末までの到着分から選歌。投稿は短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
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