時報俳壇(2月22日号)- ふじもとよしこ 選
楽しみは節に芽の出る冬木かな
堺市 加藤恵秋
自在鍋ゆれ天窓の雪明り
岐阜県 安江智津子
戦ある地球を捨てず春を待つ
東京都 吉田柳哲
春近し潮満ち来る能舞台
大津市 平井紀夫
羽子板市きりりお目見え団十郎
横浜市 番家達也
初凪の遠流を偲ぶ空の彩
鳥取県 野間田芳恵
存命の理てふ掛け軸や年新
尼崎市 前田禎子
比良に雪鳥動かざる点となり
天理市 中山富貴
今朝の春互いを杖に六十年
札幌市 田森つとむ
鍬の柄が手形に窪む冬の納屋
天理市 北をさむ
蠟梅の透けて良き縁よき兆し
橋本市 北村薫
憧れの卒寿媼や冬薔薇
高崎市 正田久美代
冬夕焼家路はすでに灯るかな
江別市 杉山忠和
雪降るやしなしなと来る黒き猫
豊川市 菊地美智代
寒き夜は夫と語らいつ鍋づくし
箕面市 志賀恵美
悴む手重ね合せし夫婦かな
今治市 仙波絹子
冬ざれをひたすら歩む親の道
飯田市 本島美紀
成人の旬と仕切るや福寿草
宇治市 原清彦
巡教は親の思いや冬温し
東京都 大矢典子
又とない小春授かり句の会に
いなべ市 筒井みつ江
一斉に翔つ水鳥や島動く
千葉市 新江堯子
冬耕の鍬に顎乗せ憩ふ人
近江八幡市 若林白扇
犬になりたや猫になりたや雪の朝
埼玉県 金子ひろみ
冬野菜を競い収穫孫二人
観音寺市 川上隆子
蝋梅の匂いし水辺日のやわら
豊岡市 谷口質子
大寒に咲く花愛し我が庭に
北九州市 石井喜代美
悴めど理を振る手ふりよろづよの
津山市 工藤圭志
選者詠
海光のまばゆき斜面水仙郷
【評】
加藤さん
冬木も季が来れば節から新芽が出て緑の葉を繁らせます。その楽しみを、お道でも「節から芽が出る」と教えていただいているのです。
安江さん
屋根裏からの自在鍋が揺れるのを見て視線を上げると、天窓の積雪明りが印象的だった雪国独特の雰囲気です。
吉田さん
人と人との戦、人とウイルスとの戦が続く地球にも、刻一刻と自然界の春の訪れが聞こえている今日このごろなのです。
次回は、4月末までの到着分から選句。投稿は春の季語(2、3、4月)を用いた俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号
「時報俳壇」係
Eメール=[email protected]