バトンの指導を通じて生徒たちを輝かせたい 樟蔭中学校・高等学校バトントワリング部監督/舞バトンアカデミー代表 稲田麻衣子さん – ようぼく百花

大阪の伝統ある女子校、樟蔭中学校・高等学校(東大阪市)でバトントワリング部、ポンポンチア部の計4チームの代表を務めている稲田麻衣子さん(49歳・南髙輝分教会ようぼく・大阪府八尾市)。2022年12月に開催された第50回「バトントワーリング全国大会」では、高校バトン部が2年連続グランプリ、文部科学大臣賞、中学バトン部、同ポンポンチア部が最優秀賞に輝いた。
小学2年生の夏、「おやさとパレード」でバトンの演技に魅了された。以来、地元のバトンスクールへ通うようになり、4年生のとき全国大会で上位入賞を果たした。さらに、高校時代には世界選手権の代表に選ばれるなど、プレーヤーとして優秀な成績を残した。
その後、天理大学体育学部へ進学したが、「いつか自分のチームを率いて全国大会へ」との思いが高まり、大学在学中に現役引退。創作ダンスを学び、団体バトン演技の表現の幅を広げながら、教員資格を取得した。
大学卒業後、樟蔭中学校・高等学校へ赴任し、同高バトン部の代表に就任。すぐに指導者としての手腕を発揮し、無名だった同部をわずか3年で全国へと導いた。
その後、25年にわたって指導を続け、中学・高校の4チームが全国大会でグランプリや最優秀賞などを獲得している。
教えをもとに生徒の心を養う
稲田さんのチームに共通するモットーは「one for all, all for one」。「一手一つの精神で仲間とたすけ合い、心を一つにして演じてほしい」という思いを込めている。
また、稲田さんが指導し始めたころから、各チームで受け継がれてきた伝統がある。それは、練習の準備や片づけは、すべて上級生が行うというもの。この伝統によって、チームに入ったばかりの下級生は、心に余裕を持って練習に取り組むことができ、上級生も責任感と献身性が養われるという。
「チームを家族に例えるなら、上級生が姉で、下級生は妹。姉が妹の身の周りのことをサポートし、妹は姉たちの期待に応えるように力をつけていく。姉の姿を見て育った妹は、自分が姉の立場になったとき、自然と人を助けられるようになる」
一方”ようぼく教師”として、生徒たちに「徳積み」の大切さを分かりやすく伝えている。それは「徳積み」を「ポイント」に譬えるというもの。「誰かにありがとうと言われたり、誰も見ていないところで良い行いをしたりしたら、神様からポイントがもらえる」と説明すると、生徒たちは日常生活の中で素直に「徳積み」を実践するようになった。
稲田さんは現在、中学・高校で代表を務めるほか、自ら立ち上げたバトンスクールの舞バトンアカデミーでもプレーヤーの育成に尽力している。
「生徒はみんなダイヤの原石だと思う。バトンの技術という一面だけでなく、学校の勉強や人を思う心など、さまざまな面を磨くことで初めて舞台で輝くことができる。バトンの経験が彼女らの人生の糧となるよう、これからも一手一つをもとに指導を続けたい」