天理時報オンライン

梅と桜の婀娜くらべ


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梅と桜は日本の春に彩りを添える代表的な花ですが、その特徴は対照的です。

梅は、いまだ寒さが残る晩冬、ポツリポツリと咲き始めます。「探梅」とは、“花の魁”ともいわれる早咲き梅の香りを求めて野山を歩くこと。ためらうように散りなずむ姿にも風情を感じます。

一方、桜は暖かくなると、一斉につぼみを膨らませ、数日のうちにほとんど花開きます。そして散り際の見事さ。はらはらと舞い散る桜吹雪は、これも日本人好みの潔さです。

探梅といえば一人か二人で歩く絵が、また花見といえば、大勢で賑やかに宴に興じるさまが浮かびます。「両手に花」とは梅と桜のこと。どちらも場面に応じた彩りの添え方で、人を楽しませてくれます。

色合いは派手ではありませんが、それぞれなりに、私たちの心を癒やしてくれる梅と桜。どんな人にも、どんな場面でも、相手の心に寄り添う人になりたい――そう願いながら、散る梅を惜しみ、桜を愛でたいと思います。

Cha

*婀娜とは、たおやかで美しいさま