インドへ蒔かれた種 – 道を楽しむ8
20年前、教祖120年祭三年千日が始まる本部春季大祭。真柱様のお言葉を、私はインド人家族と一緒に拝聴していた。
その2年前、私は「布教の家」北海道寮に籍を置き、札幌で布教に明け暮れていた。戸別訪問で知り合った北海道大学のインド人留学生M君。彼の知人であるA氏が家族で関西へ旅行するというので、お薦めの観光場所を尋ねられた。聞けば、1月25日から3日ほどの日程で、ちょうど私も岩手からおぢばへ帰っている期間。ぜひ、お世話取りさせてほしいと願い出た。
A氏は2年ほど北海道大学へ研究に来ていたインド人の獣医。奥さんと3人の子供を連れて、おぢばへやって来た。26日の祭典では、かぐらづとめから共に参拝した。真柱様の神殿講話が始まり、日本語が分からぬA氏を気づかうと、「尊いお話なので、言葉が分からなくても聞きたい」と拝聴してくれたのだ。信仰を尊ぶ姿勢に私は感服した。
翌日、予定していた京都観光をやめ、夫婦で別席を運んだ。特に「かしもの・かりもの」の教理に感銘を受けたと、興奮気味に感想を語るA氏。これまで聞いたことのない教えだと関心を持ってくれたようだ。
丸々おぢば滞在となったA氏家族の関西旅行。帰路は、福井県・敦賀港から北海道行きのフェリーによる船旅。昼すぎ、一行は港へ向かっておぢばを発ったが、彼らを見送った後、悪天候により欠航となったことを偶然耳にした。携帯電話を持たないA氏に連絡は取れない。言葉も分からず、寒い夜更けの港で途方に暮れる5人のことを思うと、いたたまれなくなった。
お道のつながりはありがたいもので、敦賀の教友に連絡を取ると、早速、教会長のE先生が港へ向かい、A氏家族を温かく迎えてくれた。結局フェリーは2日続けて欠航となり、その間、A氏家族はE先生の教会にお世話になった。観光よりも大祭参拝や別席を快く優先してくれた家族を、親神様・教祖は結構にお守りくださったに違いない。先回りのご守護と、教友のつながりのありがたさに心打たれた。
後日、A氏から感謝あふれる丁重なお礼状が届いた。20年前にインドへ蒔かれた小さな種。親神様のお導きにお応えしようと、いまだ細々とではあるが、丹精に努めている。
中田祥浩 花巻分教会長