家族の世話をする子供の現状学ぶ – ひのきしんスクールシンポジウム「ヤングケアラーを知る」から
ひのきしんスクール(村田幸喜運営委員長)は3月25日、シンポジウム「ヤングケアラーを知る――わたしたちにできること」を陽気ホールで開催した。
これは、本来は大人が担うとされる家事や家族の世話などを任され、受けるべき教育を受けられない、同世代との人間関係を満足に構築できない18歳未満の子供「ヤングケアラー」の現状を知り、教会やようぼく一人ひとりができる支援について考えるもの。
当日は、村田委員長のあいさつに続き、医療的ケア児等コーディネーターで、ひとり親家庭・ヤングケアラー家庭支援「おかえり食堂」代表などを務める辻真一氏(甲京分教会長)が「ヤングケアラーを知る」と題して登壇。ヤングケアラーの定義や、当事者の置かれている現状について解説した(要旨別掲)。
「できること」を共に考える
この後、厚生労働省作成の動画を上映。引き続き辻氏、渡辺一城氏(天理大学教授)、木村佳子氏(豊筑分教会ようぼく)と、司会の笹倉雅浩氏(ひのきしんスクール運営委員)によるパネルディスカッション「わたしたちにできること」が行われた。
その中で、渡辺氏は「社会関係の構築がまだ途上であるヤングケアラーが、”ケア”について自由に相談できる場が地域の中に求められる。子ども食堂やフードパントリーなど、当事者が悩みを相談できるきっかけになるような地域活動を実践していくことが大切」と指摘した。
また、自身が幼いころから家族の世話を任された経験のある木村氏は「ヤングケアラーだと思われる子に、まず声をかけてみる。そして現状を共に受けとめ、当事者が当たり前だと思っている家族のケアは、本当に当たり前なのかと問いかけながら支援してほしい」と語った。
講演要旨
教会は”拠り所”の一つに 認知から支援につなげて
慢性的な病気や障害、精神的問題などを抱える家族の世話や、大人が本来担うと想定されるような家事などを日常的に行っている18歳未満の子供をヤングケアラーと呼ぶ。現状、ほとんどの子供は自身がヤングケアラーかどうか判断できていない。そこでまず、普段のお手伝いと、ヤングケアラーと呼ばれる状態の”境目”がどこにあるのかを大人たちは知ってほしい。
お手伝いは子供が子供としての生活の範囲で行うのに対して、ヤングケアラーの状態では、子供の年齢や成熟度に合わない重すぎる責任や作業が継続的に続く。同世代との交流など、一般に想定される子供らしい生活ができず、心身の健康や教育に悪影響を及ぼす恐れもある。
厚生労働省の実態調査では、およそ18人に1人の児童・生徒が何らかのケアを担っていることが分かった。
ところが、当事者は表面化しにくい。ある中学生へのアンケート調査では、中学生ヤングケアラーの67.7%が誰かに一度も相談したことはないと答えている。ヤングケアラーの認知や理解が世間に広まっていないため、相談しても相手にされないことがあるという。
まずは、大人たちがヤングケアラーについて認知し、当事者への支援につなげていくことが非常に大切だ。
私が現在も連絡を取っているAさんは、ほとんど学校へ行けず、虐待を受けながら家事などをさせられてきた。そんなAさんは、15歳のとき天理教の教会長と出会い、おぢばにつながったことで運命が切り替わった。Aさんの経験からも、ヤングケアラーの”拠り所”の一つとして、教会の存在は非常に重要だと思う。
家族のことは家族で解決してきた社会の仕組みに限界が来ていると指摘する専門家は少なくない。いま一度、子供の権利という視点をもって、家族全体を支えていく仕組みを考えていくことが必要だと思う。