「源氏物語」が織りなす“王朝文学”の魅力 – 第179回展「源氏物語展―珠玉の三十三選」から
東京・天理ギャラリー(東京都千代田区)は5月14日から6月11日にかけて、第179回展「源氏物語展――珠玉の三十三選」を開催する。平安時代、中宮彰子に仕えた紫式部によって著された『源氏物語』は、人の手で書き写された数々の「写本」によって今日まで読み継がれ、絵画・音楽・演劇など日本文化のさまざまな分野に深い影響を与えている。今展では、天理図書館(安藤正治館長)が所蔵する貴重な『源氏物語』資料群から珠玉の33点を展示。図書館に伝存する各資料を通じて、雅やかな王朝文学にふれることができる。ここでは、展示資料の一部を紹介する。
源氏物語絵合巻 奈良絵表紙 伝土佐光信画
室町末期写
「絵合」とは、絵画の優劣を競う遊びのこと。宮中で行われる絵合に出す作品を、光源氏と紫の上が選んでいる場面。絵師・土佐光信の筆と伝えられる。
国冬本の各巻と蒔絵箱
国冬本は異なる時代の写本を取り合わせた後、升目の中に花鳥をあしらった模様の緞子表紙へ改装され、光源氏が初めて紫の上を垣間見る有名な場面を描いた蒔絵箱に収められた。
源氏物語抄 高水本
永仁7年(1299)写〈重要文化財〉
『源氏物語』全54巻を、わずか45丁ほどで注し終えた小規模な注釈書。現在、天理図書館にのみ伝存している。
源氏物語 国冬本 伝津守国冬等筆
鎌倉末期・室町末期写〈重要文化財〉
昨年11月、文化庁の文化審議会で重要文化財に指定することが答申された『源氏物語国冬本』は、鎌倉末期写の12冊と室町末期写の42冊を取り合わせた53巻54冊からなる。鎌倉末期写の12冊は、江戸時代の古筆鑑定等により、住吉大社の神官で歌人としても名高い津守国冬(1270〜1320)の手によるものと伝えられる。また、このうちの11冊が別本とされる。
源氏物語柏木巻 伝源頼政筆
鎌倉初期写
柏木巻は、女三の宮との密通が発覚し、苦しむ柏木とその死、そして残された人々の姿を描く。元は54巻揃いであったようで、本書と全く同種の金銀泥の下絵に墨流しの表紙を持つ僚巻が存在する。
源氏物語絵巻 若紫・末摘花巻
鎌倉末期写〈重要美術品〉写真は「若紫」の一場面。のちの妻となる紫の上との最初の出会いを描いたもの。北山の僧坊で、光源氏が憧れの藤壺に似た少女を垣間見る。この資料は、国宝『源氏物語絵巻』(平安末期写)に続く古いものの一つとされる。