依存症に向き合う – ひのきしんスクール講座「事情だすけ」から
2023・7/19号を見る
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ひのきしんスクール(村田幸喜運営委員長)は6月26日午後から27日にかけて、講座「事情だすけ」をおやさとやかた南右第2棟で開催。「依存症のおたすけ――予防に向けた取り組みから学ぶ」をテーマに、専門家による講義やパネルディスカッションが行われた。
これは、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症の基礎知識をはじめ、医療、自助グループ、家族会などの社会資源を学ぶとともに、さまざまな国の機関が取り組む予防教育の視点から、ようぼく一人ひとりができるおたすけについて考えるもの。
初日の講義では、同スクールが後援する「依存症たすけあいの会」事務局長の山﨑石根氏(美阪分教会長)が「依存症の基礎知識」と題して登壇。依存症の定義や当事者との関わり方などを解説した。
続いて、ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)認定依存症予防教育アドバイザーの安東洋子氏が「依存症の予防教育」をテーマに講義。ギャンブル依存症の実態や、依存症の予防につながる取り組みについて、実体験を交えながら話した(要旨別掲)。
“今できること”を考える
二日目は、「依存症たすけあいの会」代表の鈴木顕太郎氏(東濵名分教会前会長)が「依存症のおたすけの実際」と題して講義。引き続き、山﨑、安東、鈴木の3氏と、井筒悟氏(ひのきしんスクール運営委員)によるパネルディスカッション「依存症から考える今できること――、今すべきこと」が行われた。
その中で「どうすれば当事者や家族に、自助グループとつながってもらえるか?」という質問に、山﨑氏は「私も一緒に向き合うからと、私たちが当事者の苦しみを共に受け入れ、『この人だったら話を聞いても大丈夫かもしれない』と思ってもらえるような関係性を構築することが必要」と述べた。
また、「どのような心で当事者に接すればいいか?」との質問に対し、鈴木氏は「自分がどうなってもいいというような自己犠牲の精神で向き合うのは大きな間違いだ。まず、自分の心と体を大事にする姿勢を忘れず、おたすけに臨んでほしい」と語った。
【講義要旨】ライフスキルの習得が発症予防につながる
安東洋子氏
私自身、元夫のギャンブル依存症に悩まされた経験がある。ギャンブルにのめり込む元夫に対して、当時は「私がなんとかしなくては」と借金の尻ぬぐいを繰り返したが、むしろ状況は悪化した。
こうしたなか、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子氏と出会ったことで、ギャンブル依存症は脳の働きに異常のある病気であり、”家族の愛”では治らないことを知った。さらに「自助グループ」に参加する中で、私自身が「相手をどうにかしたい」と考えるあまり、「共依存」(コラム参照)の状態に陥っていたことを知った。
その後、自助グループに参加する中で共依存状態を脱し、元夫との向き合い方を変えることができた。
皆さんには、自助グループやセミナーなどの相談先があることを知ってもらい、当事者とその家族に「助けを求めるのは決して甘えではない」と伝え、支援機関とつながるように背中を押してほしい。
また、WHO(世界保健機関)が提唱するライフスキル(日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な「心理社会的能力」)によって、依存症発症のリスクを減らすことができる。
つらいときや悲しいときに、一人で感情を抱え込む人は依存症や共依存に陥りやすい。こうした感情に対処するには、「つらいときは一人で悩まず誰かにそっと打ち明ける」といった”自分を好きになるトレーニング”が有効だ。感情への対処とセルフケアを日常的に行い、ライフスキルを身につけることが、依存症の予防につながる。
感情という”自分の内側からのメッセージ”を大事に扱うことは、依存症の予防だけでなく、人生を豊かにすることにもつながる。ASKでは、依存症の相談はもとより、ライフスキルを伝える活動にも積極的に取り組んでいる。依存症のおたすけに取り組む天理教の皆さん方も、ぜひ活用していただければ。
【COLUMN】共依存
共依存とは、依存症者に必要とされることに存在価値を見いだし、共に依存を維持している周囲の人のありようを指す。迷惑をかける側と世話を焼く側という関係に互いが依存し合うことで、結果的に依存症者の回復を遅らせる事例が少なくない。