陶芸の魅力を海の向こうへ 美濃焼伝統工芸士・水野豊滋さん – ようぼく百花
2023・12/6号を見る
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東京都とニューヨーク市の交流を目的とする第19回「東京・ニューヨーク姉妹都市交流陶芸コンテスト」(主催=陶芸友の会)が今春、ニューヨークで開かれた。このコンテストで、美濃焼伝統工芸士として活躍する「守山窯」窯元・水野豊滋さん(68歳・愛德分教会守山布教所長)が出品した「彩」が優秀作品賞に選ばれた。
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美濃焼の産地として長い歴史を持つ岐阜県土岐市。陶芸の意匠が随所に施されたこの街に、水野さんが窯元を務める工房「守山窯」はある。
父・守さん(故人)が一代で築き上げた守山窯。美濃焼十二品目の一つ「志野」を得意とする工房として、数々の作品を世に送り出してきた。安土桃山時代に登場した志野は、温かみのある柔らかな乳白色に焼き上がるのが特徴だ。
幼少から、守さんが陶芸に打ち込む姿を見て育った水野さん。薪や粘土などが子供のころの遊び道具で、見よう見まねで怪獣などを作ると、父は”作品”として焼き上げてくれたという。
中学卒業後は、多治見工業高校工業デザイン科を経て、同高の陶芸専門コースである専攻科陶磁科学芸術科へ。専攻科1年のころ、教祖90年祭の記念品として本部から各教会へ下付される陶額の制作依頼が守山窯に舞い込み、水野さんは父の手伝いとして制作に加わる。これが陶芸家としての記念すべき第一歩となった。
その後、守山窯の職人として腕を磨き、平成16年に父から窯元を受け継いだ。18年、美濃焼伝統工芸士の認定を受けた。
「守山窯」の看板の傍らには、「天理教守山布教所」の看板が掲げられている。
昭和40年、信仰初代の母・咲子さん(故人)が開設した。水野さんは平成10年、母の後を継いで2代目所長に就任した。夏の「こどもおぢばがえり」には毎年、自身が指導者を務めるミニバスケットボールチームの児童を連れて帰参している。
使われてこそ増す魅力
これまで国際コンクールへの出品や、アメリカのテネシー大学で行われた陶芸体験教室で講師を務めるなど、海外での活動にも力を入れてきた水野さん。こうしたなか、ニューヨークに住む教友から「東京・ニューヨーク姉妹都市交流陶芸コンテスト」への参加を勧められ、第11回大会に初めて応募。以来、開催ごとに欠かさず出品してきた。
今回の作品は、志野独特の白地の釉薬の下に色とりどりの化粧土を重ねることで、伝統的な技法と現代的な華やかさを両立させようと構想。釉薬の調合、形成、色づけなどの各工程で試行錯誤を繰り返しながら、一心不乱に作品に向き合ったという。
「茶の湯の世界で生まれた志野は、器としての用途を持ち、暮らしの中に溶け込んできたもの。窯から出したときよりも、持ち主に長く大切に使われることで味が出て、その魅力が増す」と語る。
完成した作品「彩」は、その名にふさわしく、色彩豊かな中にも重厚感のあるたたずまいを醸し出す逸品だ。
今大会の審査では「優秀作品賞」を受賞。ニューヨークにある「ザ・ニッポンクラブ」内のギャラリーで展示され、来場者から「存在感がある」などのコメントが寄せられた。
水野さんはこれからも、国内はもとより海外での展示やコンクールに精力的に出品し続ける意向だ。
「幼少から陶芸にふれてきたが、私の陶芸人生はまだまだこれから。今後も志野の新たな可能性を模索しつつ、その魅力を多くの人々に知ってもらうとともに、使う方に喜んでもらえる作品を作っていきたい」
(東愛大教会・家田社友情報提供)