年祭の旬に互いに勇ませ合い地域に“布教実動の輪”広げて – シリーズルポ「布教の現場から」
2024・3/6号を見る
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教友有志の布教グループ
大阪教区和泉支部にをいがけ推進隊
教祖140年祭へ向かう三年千日の2年目に入り、2026年1月26日の年祭当日まで残り700日を切った。
「諭達第四号」を指針に、仕切って成人の歩みを進めることが求められるなか、現在、各直属教会では「教祖140年祭教会長夫妻おたすけ推進のつどい」が順次開かれるなど、全教を挙げた布教実動の機運が高まっている。
こうしたなか、各地でも教友同士が互いに勇ませ合い、にをいがけ・おたすけに歩く姿が見られる。
その一つ、大阪教区和泉支部(寺岡信司支部長)では、布教グループ「和泉支部にをいがけ推進隊」を結成し、市内の駅周辺や住宅街で路傍講演や神名流しを毎月実施している。
同推進隊は9年前、教祖130年祭へ向かう三年千日の3年目に、管内ようぼくがにをいがけ・おたすけに歩く一助として始まったもの。教祖130年祭に向け、仕切って実動を続けたのち、いったん活動に区切りをつける予定だったが、熱心な参加者である信仰初代のようぼくの要望で、以後も活動を継続。実動日を増やし、現在は月4回、数十人の教友有志がにをいがけ活動に取り組むなか、このたびの教祖140年祭活動に入ってからも、新たな参加者が増えているという。
年祭の旬に教友有志が互いに勇ませ合い、地域に“布教実動の輪”を広げる――。活動開始から10年目を迎えた「和泉支部にをいがけ推進隊」の“布教の現場”を取材した。
教友の熱意で活動10年目実動の原動力は“つながり”
2月19日午前9時半、大阪府和泉市の“玄関口”JR和泉府中駅前に「和泉支部にをいがけ推進隊」の教友11人がズラリと並ぶ。
「私たちは天理教を信仰する者でございます」
支部の布教部長であり、「推進隊」の責任者を務める阪口宣広さん(51歳・四海浦分教会長・高石市)が路傍講演の第一声を駅前に響かせた。続いて、参加者が順番に路傍講演に立ち、自らの信仰体験を踏まえ、教えの一端を道行く人に語りかけていく。
その傍らで、参加者の女性教友が、身上を抱える男性におさづけを取り次ぐ場面も見られた。
「教友が現場に出る機会をつくろう」と
10年前の教祖130年祭活動2年目の年末、阪口さんは年祭に向けた自身の心定めとして、最寄り駅での毎日の路傍講演を続けていた。一方、年祭活動3年目を目前にしても、なかなか実動の一歩を踏み出せない教友が少なくないことが気がかりだった。
そこで「地域の教友が少しでも多く現場に出る機会をつくろう」と、当時の支部布教部長に相談のうえ「推進隊」を発足。年明けから毎月19日に布教実動することを決め、『支部報』に案内を載せた。
「参加してくださる教友がいるかどうか分からなかったため、まずは年祭の当日まで1年間と仕切り、たとえ参加者が私一人でも必ず実施していこうとの思いで活動を始めた」と述懐する。
1月の参加者は、案内が十分でなかったため阪口さん一人だった。だが、翌2月の実動日から徐々に人が集まるように。以後、「初めての人も安心してにをいがけに参加できる」ことをモットーに、さまざまな工夫を凝らしながら毎月地道に活動を続けた。
ようぼくの自覚 再確認する機会
翌年1月19日、教祖130年祭直前の実動をもって「推進隊」の活動に区切りをつける予定だった。
ところが、一人の参加者が思わぬ声を上げた。
「これからも、ぜひ続けていきましょう!」
活動当初から毎月欠かさず参加してきた、信仰初代の澤内典生さん(75歳・泉岬分教会教人・和泉市)だった。
澤内さんは23歳のとき、なじみのクリーニング店の経営者から、にをいを掛けられた。その後、自身に身上を見せられた際、心臓が約9秒間停止し、命の危険が迫るなか、奇跡的に一命を取り留めるという鮮やかなご守護を頂いた。
このとき、「神様のご恩に報いるために、にをいがけ・おたすけに積極的に励もう」と心に定めた。時を同じくして、活動が始まったばかりの「推進隊」の存在を知り、初参加。布教経験はなかったが、教会長らに導かれながら実動の機会を重ねた。
「私にとって『推進隊』の活動は、自らの信仰心を高め、ようぼくの自覚を再確認する貴重な機会だった。ぜひ続けてほしかった」
澤内さんの強い思いを聞いた阪口さんは、その熱意にほだされ、「推進隊」の活動継続を決めた。
以後、月1回の実動を続けるなか、『支部報』や支部の季刊誌『ようぼくだより』、さらにSNSを通じて参加者が増えてきたことから、実動日も月4回に増やした。
また、コロナ下では路傍講演に代えて、作成した横断幕を掲げ、リーフレット配りの代わりに特設スタンドにチラシを置いて、誰でも持っていける形にするなど、状況に応じた取り組みを続けた。
今年2月19日の実動日も、積極的に布教実動に勤しんだ澤内さん。「『推進隊』に参加する中で、自らにをいがけ・おたすけに動く“信仰的な自主性”を持つことができたと思う。年祭活動2年目に入ったいま、にをいがけに一層邁進したい」と意気高い。
参加をきっかけに一人でも実動へ
一方、勇んだ声で信仰の喜びを語る竹田洋子さん(65歳・佐治分教会教人・同)は、4年前から仕事の休日などに参加している。
6年前、夫がバイクを運転中に事故に遭い、意識不明の重体になったところを、不思議なご守護を頂いた。
以来、「信仰者として何かしなければ……」との思いを強くした。翌年、支部行事に参加した際のグループワークで思いの丈を打ち明けたところ、ある教会長から「推進隊」への参加を勧められた。
「大勢の前で話すことが苦手で、路傍講演に立つことができなかった」と振り返る竹田さん。「とりあえず、見るだけ見てみよう」と活動現場へ足を運んだとき、道行く人に熱心に教えの一端を語りかける教友の姿を目の当たりにした。
「その姿に不思議と勇み心が湧き、その日に参加を決めた」
これ以後、「推進隊」の一員として実動するなか、現在では自身で原稿を作成し、堂々と胸を張って街頭に立ち、ご守護のありがたさを語りかけている。
「『推進隊』に参加する教友の頑張りが、回り回って私自身の原動力になっている。先輩布教師の方々が『自分のペースで前に立てばいいよ』『分からないことがあったら何でも聞いてね』と、温かく見守ってくださるおかげで、自信を持ってにをいがけ活動に取り組むことができている」
最近では「推進隊」の実動日以外に、一人でのにをいがけ活動にも挑戦しているという。
竹田さんは「私たち夫婦がたすけていただいた話を、広く社会の皆さんに伝えることで、悩み苦しむ誰かのたすかりにつながっているかもしれない。これからもにをいがけを続け、一歩ずつ成人の道を歩んでいきたい」と話した。
◇
この日の活動終了後、「振り返り」の時間が持たれた。これは、路傍講演終了後に参加者が自身の信仰などについて語り合う場として設けられているもの。
その中で、前回の活動日に初めて参加した50代の男性ようぼくのことが話題に上った。仕事の関係で和歌山から単身、和泉市へ赴任した男性は、年祭活動として実動の機会を模索していた際に、「推進隊」の取り組みを紹介する『ようぼくだより』を見て、活動に参加したという。男性ようぼくの話題を皮切りに、教友たちは次々と信仰談議に花を咲かせていく。
その様子を見ながら、阪口さんは「『推進隊』の活動は今年で10年目を迎えた。発足当初に蒔いた種が、地域の教友のつながりとして実を結び、それが実動の原動力になっていると思う。これからも、『推進隊』が地域のにをいがけ活動の窓口になり、ようぼく一人ひとりが実動への一歩を踏み出す後押しをしていくことが、年祭活動の機運を高めていくことにつながると思う。これからも教友と一手一つに、にをいがけの輪を広げていきたい」と語った。
文=久保加津真
写真=根津朝也