“今を生きる”若者たちへ – 視点
あるマーケティング会社が18歳から20歳までの男女に行った意識調査によると、「今悩んでいること」として挙げた第1位が「今後の未来のこと」だったという。この調査結果から、若者の間に将来への漠然とした不安感が募っていることが見て取れる、と分析していた。
実際に、筆者の周りでも、「これから日本は困難な時代になると思いますが、その中で力強く幸せに生きるために必要なことはなんですか?」という質問を若い人から受けることが増えている。
こうしたなか、9月1日に道友社から発刊された『時の中の自分――サグラダ・ファミリア「石のマエストロ」魂をはぐくむメッセージ』は、そうした若者に薦めたい一冊である。
著者の外尾悦郎氏は、ようぼくであるとともに、日本人でありながらスペイン・バルセロナにある世界遺産として有名な未完の大聖堂、サグラダ・ファミリアの主任彫刻家を務めた世界的な著名人である。本書は、2018年に天理大学客員教授として同大で行われた特別講演の内容をもとにまとめたもので、いわば外尾氏から今を生きる若者へ贈られたメッセージである。
本の中で外尾氏は、サグラダ・ファミリアの設計者である天才建築家アントニ・ガウディの思想をひもときながら、「オリジン(起源)を忘れなければ、どんな時代でも同じように、時の中を真っすぐに歩いていけるはず」と述べ、さらに「一人の人間として時代の変化に翻弄されるのではなく、自分の元をしっかりとわきまえ、自分を持っておくということが、実は非常に力強いということです」と語っている。
オリジンとは「元」である。お道でいえば、親神様が子供の陽気ぐらしを楽しみに人間と世界を造られたこと。すべての人は互いに兄弟姉妹であること。身体は、かりものであること。そして、誰もが幸せになるために生まれてきたことなどを指すだろう。いま、あらためて「元」を心に治めることが、困難な時代を生きる力になるということを、若い人に信念をもって伝えるときだと感じている。
(諸井)