時報歌壇(11月23日号)- 植田珠實 選
海色のスニーカー買う僕たちの小樽で遊ぶ約束のため
北海道 堀善道
十五夜に近所を回る子らのいてお芋とお菓子を庭に供える
熊野市 福山久美子
入院の夫の付き添い許されぬ最期も会えずコロナに負けて
鳥取市 西村節子
ありがとう八十八年導かれこの道ありて楽しき旅よ
川崎市 木村道治
戦争を知らない時代に生かされる核無き世界と願いを込めて
所沢市 三上理恵子
コロナ禍よいつまで続くかなわんよ、マスク外して叫びたくなる
京都市 寺澤幸子
黄昏て星の港に風そよぎ秋の夜長に綴る抒情詩
福岡市 山口巳津夫
赤ダリヤをそっと撫でれば「もっと燃えて生きてごらん」と言われたような
宇佐市 三好秋美
いつの日か人に寄り添う温む歌詠めるような私になろう
福山市 藤井光子
けふより六日不在の妻を寂しみて一日雑炊の鍋ひとつ煮る
秋田県 鎌田正男
幼児に戻りてつつがなき母はめでたく卒寿の日々を過ごせり
横浜市 及川秀代
耳鳴りを蝉かと思い見る山にはやくも柞紅葉している
石川県 岩城康徳
金柑の青きつぶら実つつきゐる番のメジロは“二羽ゐて一羽”
高槻市 石田たまの
深秋をスマホの動画に耳当ててひとりで笑う夜は更けゆき
狭山市 平本トミ子
稲刈りの農機具の口パクパクと稲をたいらげ夕陽落ちゆく
ふじみ野市 酒井笑子
選者詠 – 中和大教会四代会長植田平一先生へ
賜りしあまたの教へおもひつつ
偲びてやまず冬日のなかを
【評】
堀さん
ロマンチックな北からの一首。
福山さん
満月の光の中の童話のようです。
西村さん
コロナ禍に、病院、施設での面会が制限され、悲しい思いをされた方も多かったことでしょう。
木村さん
生き来た人生を「楽しき旅」だったと。幸せです。
次回は、12月5日までの到着分から選歌。投稿は新年に関する短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
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