天理の“文化財”高評価 – 天理図書館
文化庁の登録・指定へ
先ごろ文化庁の文化審議会で、天理図書館(安藤正治館長)所蔵の『源氏物語国冬本』(鎌倉後期・室町後期写)を重要文化財に指定することが答申された。同館所蔵の資料が重文に指定されるのは、平成30年の『源氏物語』池田本(鎌倉末期写)に続いて87点目。また同日には、同館の建物を登録有形文化財として登録することが答申された。これを記念し、同館は11月21日から26日にかけて、建造物の見学・解説を行う「天理図書館見学会」を実施した。
図書館の建物 登録有形文化財に
新たに国の登録有形文化財として登録される同館。現在、約150万冊の蔵書数を誇り、国宝6点、重文86点などの貴重書も多数有している。大正7(1918)年に創立した天理教青年会の事業の一環として設立が打ち出され、昭和5(1930)年10月18日に現在の本館が完成。「おふでさき」の研究のうえから、創設者の中山正善・二代真柱様が収集された連歌・俳諧書コレクションの「綿屋文庫」をはじめ、国内外の貴重な資料が同館へ収蔵された。
設計は、東京大学安田講堂の設計にも関わった坂静雄氏と、学校建築を手掛けた島田良馨氏によるもの。
西館の外観は、ロマネスク風になっている。一方、昭和38年に増築された東館も、西館と一体感をもって建てられている。
92年前の建造物および調度品が、現役の図書館として使用されている事例は珍しく、歴史的・文化的にも価値が高いという。
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なお、登録有形文化財への登録が答申されたことを記念し、同館では11月21日から26日にかけて「天理図書館見学会」を実施。建造物としても高く評価された天理図書館に関心を寄せる、多くの一般来場者が訪れた。
『源氏物語国冬本』重要文化財に
今回、重文指定されるのは『源氏物語国冬本』(鎌倉後期・室町後期写、縦16.5センチ、横16.5センチ)。
平安中期に成立した『源氏物語』は、日本の古典文学の中で、『古今和歌集』と並んで最も多くの写本が伝えられている。ところが、成立当時の伝本は、これまで確認されていない。そのため鎌倉期のものが、現存する最古の写しとされる。
同写本は、鎌倉後期に書写された12冊と、室町後期に書写された42冊からなる『源氏物語』53巻54冊。このうち、鎌倉後期の12冊が、住吉神社の神官の津守国冬(1270〜1320)が記したものと伝承されていることから、当写本は「国冬本」と通称されている。
鎌倉後期の写本が、一人の人間の手によって12冊(このうち別本が11冊)もまとまって残された事例が貴重であるため、国冬本は『源氏物語』の研究において極めて価値が高い資料となっている。