感謝を原動力に旅行業の再生へ (株)たびぞう代表取締役 大林大悟さん – ようぼく百花
株式会社たびぞうは、城崎温泉街(兵庫県豊岡市)に拠点を構える旅行会社。代表取締役を務める大林大悟さん(42歳・神戸牧分教会ようぼく=写真中央)は、地方ならではの資源を生かした独自のアイデアで観光事業を展開。先ごろ、地域おこしに取り組む事業者を表彰する第3回「アトラクティブジャパンアワード」で最優秀賞に選ばれた。
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兵庫県香美町の未信仰家庭で育った。高校の修学旅行をきっかけに旅に興味を持ち、専門学校で旅行業の基礎を学び始めた。
こうしたなか、20歳のときバイク事故に遭い、「40歳で歩けなくなる」と宣告された。涙を流す日を送るなか、偶然にも同じ病院内で白血病のため入院していた同級生Aさんと再会した。Aさんに将来への不安を打ち明けたところ、「俺に比べれば、やるべきことがあっていい。これがおまえの運命や」と諭された。Aさんは、ほどなく亡くなった。
「自分には何か役割があるはず。まずは、当たり前の日常に感謝して生きることから始めよう」と。
6カ月の入院生活を経て、日常生活に支障なく歩けるまでに回復した大林さんは、専門学校を卒業し、県内の団体旅行を取り扱う旅行会社に就職。亡き友人の言葉を胸に、精いっぱい勤めた。
33歳のとき、神戸牧分教会長の長女・恵理子さん(38歳)と結婚。その後、恵理子さんに導かれて初めておぢばへ帰り、教祖殿でぬかずいたとき、けがで長年違和感のあった左足が、正座をしても不思議と痛まないことに気がついた。大林さんは「神様が必ず守ってくださると実感した。そして、新たな挑戦の気持ちが一層高まった」と当時を振り返る。
その後、大林さんが歩けなくなると宣告された40歳を迎えた2019年12月、株式会社たびぞうを設立した。
廃業の危機乗り越え
起業して3カ月が過ぎたころ、コロナ禍によって売上がゼロになり、廃業も危ぶまれる事態に陥った。土壇場の状況で、大林さんは諦めずに起死回生のアイデアを模索。「安心して旅行したい」「コロナ疲れを癒やしたい」というニーズに応え、地元の人と協力しつつ新たな旅を提案する事業転換に着手した。
こうして一昨年8月、電動バイクや3人乗り三輪車「トゥクトゥク」で城崎温泉街の周辺を巡るツアー「城崎ぷちたび」をスタートさせた。
これが大反響を呼ぶ。SNSで口コミが広がり、事業の立ち上げからわずか2年で、累計5,000人が利用する人気ツアーとなった。
こうしたなか今年7月、第3回「アトラクティブジャパンアワード」で、全国400以上の事業から、県内初となる最優秀賞に選ばれた。
「神様からお与えいただくすべてのものに感謝し、それを生かそうと前へ前へと挑戦し続けた結果、初めて、こうした“ご褒美”を頂き、本当にうれしかった」
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現在、各地の商工会の依頼を受け、講演活動を行っている大林さん。「旅で感動。感謝」を企業理念に掲げる同社のノウハウを語り伝え、コロナ禍で経営が落ち込んだ全国の観光業を再生させようと奔走している。また今年11月からは、三重県伊勢市で「伊勢ぷちたび」をスタートさせるなど、次々と新しい事業を展開している。
大林さんは「これからも、旅行を通じて感謝の輪が広がるような旅の体験を提供していきたい」と話している。