書評 編集部 – 『十二下りのてをどりを身近に』
教祖ひながたを踏まえ「十二下り」に焦点当て
道友社は5月1日、新刊書『十二下りのてをどりを身近に』を刊行した。本書は、同名タイトルで『みちのとも』誌上に25回(立教180年1月号から182年5月号まで)にわたって連載されたものを大幅に加筆・修正したもの。著者は、本部直属やまとよふき分教会長・深谷太清氏。現在、天理教学生担当委員会委員を務める傍ら、天理大学および天理教校本科で講師を務める。ここでは著者の談話を交えつつ、本書の特徴や読みどころを紹介する。
「みかぐらうた」を解説した本は少なくないが、本書の章立ては極めて特異である。冒頭、「なむてんりわうのみこと」から筆が起こされた後、「かぐらづとめ」(第一節〜第三節)および「よろづよ八首」を除いて、話題は一下り目から十二下り目の各下りに及ぶ。
本書の構成について著者は、教祖が教えられた“順序”に着目したと語る。「教祖は五十年のひながたにおいて、親神様の教えをお伝えくださるとともに、その教えを私たちが身につけ、人に伝えさせていただく“順序”についてもお示しくださっているように思う。
『なむてんりわうのみこと』の神名を唱えることに始まり、『あしきはらひ』のおつとめに続いて、『十二下りのてをどり』を先に、最後まで教えてくだされたことに注目して、今回は『十二下り』に絞って書かせていただいた」
このたびの発刊に当たっては、お歌の意味をあらためて捉え直した部分も少なくなかったという。たとえば、三下り目の「三ッ みなせかいがよりあうて でけたちきたるがこれふしぎ」のお歌について、本書では「普請ができ(でけ)、棟を建ち上げる(たち)までに至った(きたる)」という新たな解釈が展開されている。
著者はこの点について、八下り目の「三ッ みなだん/\とせかいから よりきたことならでけてくる」のお歌と比較する中で得られた気づきだったと説明する。
「お歌のニュアンスとしては、よく似ているが、『でけてくる』と『でけたちきたる』の語句の違いに意味があると思案した。三下り目では、ただ普請ができてくるのではなく、元治元年のつとめ場所の棟上げができてきたことを指しているのではないか。そう解釈して初めて、後に続くお歌とのつながりもよく見えてくる。皆が寄り合って棟上げができたことに対して、次の四ッのお歌で『よう/\こゝまでついてきた』とお労いくださるとともに、棟上げ直後の大和神社のふしを念頭に、『じつのたすけハこれからや』と仰せくださっているように感じる」
手振りとの結びつき
また、要所に配された手振りのイラストにも注目したい。本書では個々のお歌を解説するに当たって、教史や時代背景を踏まえて考証するのみならず、手振りからの思案を試みている。
「教祖は、お歌のみならず手振りも直々に教えてくだされた。二つは互いに補完し合うものであり、双方を思案するなかで初めてお歌に込められた思召も汲み取らせていただけるのではないか」
お歌と手振りを通して理を思案し、教祖ひながたの中にすべての答えを求めようとする著者の真摯な研究態度が随所に見られる。
著者は「信仰を始めた人に、どのように教えを身につけてもらうのかが、いま重要な課題だと思う。そうした意味からも、『十二下り』はもともと親しみやすく覚えやすいうえに、歌い踊る中で知らずしらず心が陽気になり、教えに導かれるように作られていることは見逃せない。まずは、もっと多くの人に『十二下り』を身近に感じていただきたい。本書が、その一助になれば」と話している。