おやのことば・おやのこころ(2021年5月23日号)
優しい心持ってくれ。これより楽しみ無い。
「おさしづ」明治33年7月3日
若葉輝く日の朝、近隣宅に仮住まい中のツバメのひなが、軒下の巣から初めて小さな顔をのぞかせました。親鳥に餌をねだって、「ピーピー」と可愛い声で鳴いています。
そんな親子の様子をほほ笑ましく眺める一方で、これから始まる子育てを思うと、天敵に襲われはしないかと心配になり、つい足を止めて巣を見守ってしまいます。
初夏の街を歩くと、ツバメの親子を心優しく迎えている光景に出合います。天敵が侵入しないように、巣の周りに網や簾を掛けている家もあれば、万が一の落下に備え、巣の下に厚手の布を宙吊りにしている家もあります。
「優しい心持ってくれ。これより楽しみ無い」
ツバメの子育てを見守っていると、自然と優しい気持ちが込み上げてきて、少しでも支えになりたいと思えてくるから不思議です。親鳥の帰りが遅かったり、天敵が巣の前を通り過ぎたりすると、放っておけない気持ちになります。
どこか親心にも似た優しい心でいるときは、先を楽しみにする心も湧いてくるようです。成長するひなを間近に眺めたくて、何度も巣のある所へ足を運んでしまいます。優しい心は、楽しみの心と表裏一体のようです。
縦横無尽に風を切って飛んでいた親鳥が、颯爽と巣に戻ってきました。くちばしに餌をくわえています。ひなが巣立つ日を楽しみに、優しい心で見守っていきたいものです。
(お)