書評 – 笑うて泣いてまた笑て 妹尾和夫のしゃべくりエッセー
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ハートウオームな彼に拍手
元天理中学校校長 林庄三
実は、彼と私は中学校の“同期生”なんです。
昭和39年、前回の東京オリンピックがあった年の4月、彼は大阪の小学校を卒業して天理中学校に入学。私も学校出たてで、同じ天理中学校へ新任教師として赴任した間柄です。
彼は利発で、好奇心のかたまり。キラキラと目を輝かせて何でも問いかけてくる、少年らしいピカピカの中学1年生でした。
学校が終わって宿舎に戻ってきてからも一緒でした。詰所の一棟の2階に中高生、大学生の男ばかり10人、6室に分かれて暮らしていたのです。私は一人で一室にいたのですが、毎晩、誰かが訪ねてきます。彼もしょっちゅう来ました。彼はまだ幼かった。私も若かった。その幼若が意気投合し、よく夜っぴて語らい合ったのです。リバイバルヒットした『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)のコペル君とおじさんみたいな気分でした。
そんな彼が語りに語ったエッセー本が出版されました。この8年間に『天理時報』紙上に連載されたものが四章57話に編集されて一冊に。関西弁も紛れ込んでおり、教語もカッコつきの註で登場しているため、教友にも一般の方にも親しみ易い。ご一読をおすすめしたい。
文中に、彼の30代ごろか、プロデューサーのKさんから「君は汚れてない」と励まされ、いたく恐縮、感激したくだりが出てくる。これも、浮き沈みの激しい芸能の世界を生き抜いた彼が、あの13歳当時に持っていた純で一途な心根を失わないできた証しに違いないと、うれしく思った。
これからも相手から学ぼうとする謙虚さを忘れず、一言一行を吸収し、舞台人・放送人として大成されるよう祈っている。
ホンマ、全力投球でガンバッテヤ!