水橋敏郎(70歳・名古屋市)
現在、清掃会社に勤務し、ビルの清掃作業や駅前の花壇の手入れを行っている。
8月のある日、駅前で花に水をやっていると、路上で声を張り上げる年配の男性が目に入った。よく見ると、天理教の布教師である。額に汗をにじませて懸命に教えを説く姿に、私は思わず仕事の手を止めた。
そのとき、過去の自分の姿がよみがえって、温かい気持ちで満たされた。8年前、それまで仕事中心の生活を送ってきた私は、より一層お道の御用に励むことを心定めした。以来、近所でのリーフレット配りなどを地道に続けてきたが、さまざまな理由から次第に布教から遠ざかっていったのだ。
私はその布教師に声をかけ、二言三言言葉を交わした。私と歳の近い彼は、別れ際に「お互い頑張りましょう」と生き生きした表情で話し、再び路傍講演に立った。その姿に胸を打たれ、「私も頑張らなければ」と、布教への意欲が再び高まった。
コロナの終息後には、布教を再開することを心定めしている。あのとき私を勇ませてくれた彼との出会いに感謝するばかりである。