時報俳壇(11月24日号)- ふじもとよしこ選
もとほるや灯火親しむ本屋街
埼玉県 金谷武
拍子木の音色変わりし今朝の秋
堺市 加藤恵秋
薪を割り清貧なれど紅葉酌む
旭川市 藤崎実
神泉の湧きくる音に萩の風
大津市 平井紀夫
古辞書に母の棒線秋灯下
尼崎市 前田禎子
秋茄子や切り捨ててこそ蘇る
天理市 梶谷政徳
姿見に届く吉報藤袴
橿原市 東博
十五夜に雨戸を引けば琴の音
天理市 北をさむ
スダチの香吾に小さき幸ありて
阿南市 数延仁
父母の齢を超えし温め酒
札幌市 田森つとむ
八十の書の手習ひや新茶酌む
江別市 杉山忠和
口の端にみかぐらうたを月昇る
豊川市 菊地美智代
学び舎のチャイムの澄みて秋高し
天理市 中山富貴
星月夜御伽噺を聞く童
奈良県 松村ヒロ子
皮剥の指を労ふ栗の飯
名張市 霧道三明
小豆たき明日は大祭赤御飯
箕面市 志賀恵美
ありがとう言える介護や秋の空
高崎市 正田久美代
飲友の理由は如何でも新酒会
川崎市 木倉井鷹子
空高し時報に載りし吾のエッセイ
東京都 坂田鏡介
栗飯の香りも湯気もおすそわけ
今治市 仙波絹子
山国やどっと松茸籠の中
飯田市 本島美紀
八幡平眼下の木道草もみじ
柳井市 冨山栄子
茜さす山鳥の来る熟し柿
吹田市 楓芳雄
木の実落つベンチの足に鳥遊ぶ
水戸市 富田直子
梨狩の金剛葛城指呼に置き
天理市 山田実
かんろだい月の光の降りそそぎ
小樽市 佐藤和子
文化祭占い館の長い列
横浜市 及川秀代
選者詠
角なき鹿ぬた場に泥の威を纏ふ
【評】
金谷さん
秋の夜長に、灯火親しむ読書好きな作者。本屋街を「もとほる」に心境がよく表現されています。
加藤さん
立秋の朝、おつとめの拍子木の音色に秋を感じる、感性の豊かな作者の佳句です。
藤崎さん
薪割りに北の国の情景。そして、華やかではないが、紅葉の賀を楽しむ作者。あたかも庵の風情ですね。
新年号は、12月6日までの到着分から選句。投稿は新年に関する俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号を付記のうえ、下記まで。
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