天理時報2021年4月11日号4面
ヒューマンスペシHUMANSPECIAL「綿匠新貝ふとん店」店主新貝晃一郎さんNHK「プロフェッショナル「仕事の流儀」で紹介「現代の名工」に選ばれるなど、その匠の技に高い評価を受ける〝日本一の布団職人〟がいる。「綿匠新貝ふ「とん店」3代目店主・新貝晃一郎さん(56歳・興津分教会ようぼく・静岡市)だ。新貝さんが手がける木綿布団は、すべてオーダーメード。お客さんの体格や生活スタイルに合わせて数種類の綿を配合し、世界に一つだけのオリジナル布団を仕立てていく。その仕事ぶりがNHKの人気番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で紹介されると、全国から注文が殺到しているという。布団作りの先にある、お客さんの笑顔をつくりたいと話す〝綿の匠〟の思いとは静岡市の小さな港町にある新貝ふとん店は、新貝さんと母の登起江さん、パート従業員の3人で営む。販売店舗のほか、1階に綿工場、2階に仕立て場がある別棟を構える。接客もこなす新貝さんは、作業着にネクタイ姿で木綿布団の特徴を説明する。木綿布団は次のような手順で作られる。まず工場での準備作業として、硬さや長さの異なる木綿を配合し、専用の機械で混綿のシートを作成する。次に仕立て場へと移り、約20枚のシートを何層も重ね合わせていく。重さや厚さなど細部までこだわり抜き、納得のいく状態になるまで数時間かけて調整を重ね、最後に表面を生地で包んで完成となる。「数種類ある木綿の細かい配合の比率が布団の出来に影響する」と、こだわりを口にする。戦前から90年以上続く新貝ふとん店。工場には、代々受け継がれてきた機械が並ぶ。機械には、祖父や父が仕事に取り組むうえで大切にしていた精神が文字として刻まれている。一方、仕立て場の壁には、新貝さん自身の、布団作りに欠かせない教訓”がチョークで綴られている。「一番大切にしていることがあります」と言いながら、新貝さんはある言葉を指さす。「ふとんを作るのではなく、その向うにある笑顔を作る!」そこには、〝ようぼく布団職人”としての強い思いが込められている。誰にでもできることを誰にもできないくらいふとん屋の長男として、職人である祖父、父の背中を見て育った。もう一つ、見てきたものがある。それは、神実様の前で額ずく祖父や父の姿だ。新貝家の信仰は、息子の身上をご守護いただいた曾祖母の入信に始まる。信仰は祖父へと引き継がれ、祖父は職人と布教所長の二足の草鞋を履いた。新貝さん自身も、曾祖母や祖父から「神様は、いつも私たちを見守ってくださっているんだよ」と聞かされて育った。高校卒業後、家業のふとん店を継ぐことを決意し、「やるからには日本一の布団職人になろう」と誓う。東京蒲団技術学院を経て実家に戻り、木綿布団を仕立てたが、当時すでに安価な布団が広く流通していたため、最初の3ヵ月間は全く売れなかったという。心が折れかかったある日、祖父の代からお世話になっていた顧客から注文が入った。ふと、曾祖母や祖父の言葉を思い出す。「神様は、やっぱり見守ってくださっているんだ」。その後も経営が苦しくなるたびに、思わぬところから依頼が舞い込んだ。新貝さんは、神様はもとより、信仰を伝えてくれた曾祖母や祖父への感謝の思いを強くしていった。「私も神様の思いに沿う通り方ができれば」と漠然と考えていた25歳のころ、ある教会長から次の言葉をかけられた。「ひのきしんやにをいがけ、おたすけには、いろいろな種類があり、やり方も人によってさまざま。皆それぞれに神様からお与えいただいた役目がある。あなたは布団作りを通じて、できることをすればいい」