天理時報2020年11月15日号4面
教外者が読む中島みゆき第二詩集四十行のひとりごと中島みゆき著何げない詩集に隠された「情念」先崎学将棋棋士大ファンである中島みゆきさんの「詩集」、はじめて手にとった時の第一印象は、はて?というものだった。あれだけ名曲を産み出し、数多のことばを吐き出しつづけてきた彼女が、なぜまた活字という場で、詩を残すのか。おそるおそる読んでみた。はじめの数詩を読んでみた感想は、これはいわゆる「大家の手すさび」であるなあ、というものだった。彼女はもちろん大御所ではあるが、やはり商業ベースに生きる人間であるから、なかなか自分の想いをストレートに出せる場所はすくないのではないだろうかそんな空想を持って読むと、ふと寝る前に心おだやかにベッドに入り、ふと浮かんだ情景とことばをメモに書きつける中島さんの姿が浮かんできて、ほほえましくさえ思った。そんなゆったりした気分がガラリと変わったのは、本書中盤に収録されている「ぜったいグランプリ」であった。ガーンとなった。この何げない詩集のなかに、このような「情念」が隠されていたとは。「ぜったいグランプリ」は、中島みゆきさんのデビューのころがモチーフとなった作品である。北海道で生まれた彼女は、医者の娘として育ち、何ひとつ不自由ない生活をおくっていたが、ある日突然に、父親の病によって故郷の街を離れ、そしてしばらく後に、『時代』で世界歌謡祭のグランプリを取り世に出このころの彼女の体験が、その後の創作活動において重要な意味を持っていることは自明なのだが、こうした体験のこと、ましてその時の情感のことは、あまり人間が口にするものではなく、彼女においてもまた然りであった。それが、生々しいことばで語られている。誰にも知らせずに発つ駅の改札口の傍らにでも私はいつだってあの早朝をありありと思い出せるこれらの行のひとつひとつが、中島みゆきファンにとっては宝物なのだ。人間には誰しも原風景のようなものがあり、それが時として支えになり、時として苦しみとなる。この何げない詩集のなかに、彼女の生きること、歌を歌うことの源がたしかにあって、私は震える思いで何回となく、いや何十回と読み返した。実は中島みゆきさんが北海道のことをテーマにした歌は、ほとんどない。そのひとつと思われるのが、私の大好きな『ホームにて』という歌である。そのメロディを頭に浮かべ、この詩を味わう時、最終三行目にホームということばが出てくることに、何かしらの意味があると妄想し、胸あつくなるのである。プロフィール【せんざき・まなぶ】1970年、青森県生まれ。81年、小学5年生のときに米長邦雄永世棋聖門下で奨励会入会。87年プロデビュー。91年、NHK杯戦で同い年の羽生善治を準決勝で破り、棋戦初優勝。棋戦優勝ら羽海野チカの将棋漫画「3月のライオン』の監修を務める。17年7月にうつ病を発症。1年間の闘病生活を経て、18年6月、順位戦で復帰を果たす。著書に「うつ病九段プロ棋士が将棋を失くした一年間」(文藝春秋)など多数。『四十行』さらなる活用を多部数注文の教会に特別割引道友社道友社は10月25日、定例の代表社友会を本社6階ホールで開催した。松村義司社長はあいさつの中で、同社刊行の『中島みゆき第二詩集四十行のひとりごと』について、多部数を注文する教会に特別割引が適用される「教会まとめ買い販売」の実施を発表。にいがけや丹精へのさらなる活用を促した。本書は10月1日の発売以降、全国約1千60書店で取り扱われ、メーン売り場で「平積み」や「面」陳列する例も少なくない。さらにネット通販最大手アマゾンでも、書籍全体の売り上げランキングで100位台に入るなど好調。こうした販売状況のなか、発売1カ月を待たずに重版が決定した。今回発表された割引は、通常価格1千円(税込)の本書を、教会単位で10冊以上の購入を条件に値下げするというもの。窓口は本社1階ブックコーナーで、申込書に必要事項を記入後、現金引き換えとなる。なお支部で〝まとめ買い”をする際は、申込書に代表者の教会名を記入して窓口へ。受付は12月26日まで。問い合わせは、道友社書籍販売係まで。TEL0743-62-5388陽気11月号(毎月1日発売)よろずの美の葉作家澤田瞳子愛情がまざまざと東京国立博物館で開催中の「桃山天下人の10年」展のため、先日、半年ぶりに博物館外を出訪しれづたら。いご時世とはいえ、展覧会好きの私が半年も博物館にご無沙汰とは、我ながら驚く椿事である。そのせいだろう、展示室に一歩踏み入るだけで笑みがこぼれ、私はにこにこしながら館内を回った。マスクをしていたおかげで気づかれなかっただろうが、そうでなければ完全に不審者である。「桃山」展はその名の通り、日本美術史上もっとも豪壮と称される桃山美術を通じ、日本の美意識の推移を紹介する展覧会。狩野永徳や長谷川等伯といった画家の作はもちろん、織田信長、豊臣秀吉など戦国武将ゆかりの品、千利休をはじめとする茶人の道具類までが並び、桃山時代を通覧できる構成となっている。も強烈な印象を抱いたのは、展示作品そのものではない。「泰西王侯騎馬図」という南蛮図屏風に施されていた、昭和初期の飾り金具だ。西洋画の技法と日本画の画材で四人のヨーロッパ人を描いたこの屏風は、17世紀前半に日本で制作されたと推測される品。もとは八曲一双の形で福島・会津若松の鶴ヶ城に伝来していたが、白虎隊の悲劇でも知られる戊辰戦争後に分割され、一方は南蛮美術のコレクター・池長孟の手を経て現在は神戸市立博物館に、もう一方はサントリー美術館に所蔵されている。私が「桃山展」で見たのは池長が所有していた前者。その四方や上部には金銅の飾り金具が光り、「南蛮堂」「ⅠQENAGA(池長)」の文字が刻まれているのが分かる。明治24年生まれの池長は神戸の富豪で、教科書に必ず登場する「聖ザビエル像」も、実は彼が収集した美術品の一つ。惚れ込んだ品は何が何でも手に入れる気質だったらしく、「聖ザビエル像」購入の際は、元の所有者から拒否されても諦めず、別荘を売り払ってまで相手を口説き落としたというから驚きだ。国立西洋美術館の基となる絵画作品を収集した松方幸次郎、鉄道王と近代屈指の茶人の名を併せ持つ根津嘉一郎、日本初の私立美術館・大倉集古館を開館した大倉喜八郎など、日本の近代史には美術品を愛した実業家が、姿をのぞかせる。だが実は私は、これまで彼らにあまりいい印象を持っていなかった。彼らが金に飽かせて作品を集めていたように感じていたのだ。だが今回、「泰西王侯騎馬図」に施された飾り金具は、瀟洒なデザインが作品にさらなる華やぎを添えており、それだけでこの作品への愛情がまざまざと感じられる。自らの名前をアルファベットに崩し、記号のようにあしらったデザイも美しい。ただ、金に飽かせて作品を買いあさっただけでは、このような金具は作らせまい。そう思うと、この作品を愛した池長という人物に俄然関心が湧いてきて、しばらくは近代美術史から目が離せない気分である。道友社営業時間■本社定期購読受付■本社1階「ブックコーナー」■おやさと書店■BOOKS道友■東京支社文芸連載小説ふたり星の降る夜は作/片山恭一画/リン第11話カンの瞳に映るもの前話のあらすじカンの住む地では、かつて伝染病で多くの動物が死んだ。新聞を読んでいたトトは、良好な飼育環境が疫病を防ぐという、町の農家の省吾の考えに興味を抱く。その夜、わたしは殺された牛や豚のことが気になって眠れなかった。動物たちはみんな誇りをもって生まれてくる。牛は牛であることに、豚は豚であることに。そんな動物たちが、身動きもできないような狭いところに閉じ込められ、一年ほどで肉にされる。鶏の場合は産みたくもない卵を産みつづける。挙げ句の果てに、疫病が流行れば、あっけなく殺され、白い粉をかけて埋められてしまう。まったく誇りも何もあったものではない。人も動物も病気などで死ぬべきではない。寿命があるかぎり長く生きるべきだ。どこかで何かが間違っている。どこで何が間違っているのだろう?人間が人間であることを間違っているのかもしれない。そんなことを考えているうちに、いつのまにか眠ったらしい。夢を見ていた。犬も夢を見る。しかし自分の夢かどうかわからなかった。なぜなら、いつもわたしのそばではカンが眠っているからだ。わたしが見るのは、あの子が見ている夢かもしれない。それとも一つの夢を分け合って見ているのだろうか。雨のなかを車が走っていく。かなりスピードが出ているようだ。いつもトトが波乗りに行くときに通る道と似ている。横は崖になって海に落ち込んでいる。どうやら車は、わたしたちが住む町のほうへ向かっているらしい。反対側から、もう一台の車が近づいてくる。あまり友好的とは言えない走り方だ。左右にふらついているし、スピードも禍々しいほど出ている。雨は激しく降っている。二台はどんどん近づいていく。すれ違うのは急なカーブだ。お互いに相手の車は見えない。嫌な予感がする。悪い出あいが近づいている。案の定、カーブにさしかかったところで、ふらつきながら走ってきた車がガードレールにぶつかった。はずみで反対車線に飛び出した。一瞬のことだった。二台の車は正面からまともにぶつかった。驚くべき光景だった。頑丈な車が紙屑のようになってはじけ飛んだ。乗っていた人たちがどうなったのかわからない。いや、わかっている。いかに不死身の犬でも、あれでは到底助からないだろう。人間はなぜ酒などという愚かしいものを好んで飲むのだろう。いったい水になんの不満があるというのか。動物は原則として水しか飲まない。地球上でいちばんおいしい飲み物であると知っているからだ。酒と手を切らないかぎり、人間の未来は明るくないだろう。いつのまにかカンが目を覚ましていた。その瞳に映っているのは恐怖だった。あの子も同じものを見たのだろうか?さあ、もう一度眠るんだ。嫌なことは忘れてしまえ。わたしが付いていてやる。今度は夢なんか見ずに、ぐっすり眠るんだぞ。頬を舐めてやった。潮の味がした。わたしは思い出した。海が持ち上がった日のことを。ときどきカンには未来が見えてしまう。するとこれは、いつか誰かの身に起こることなのだろうか。時報俳檀ふじもとよしこ選親里のこの日この時銀杏黄葉づ天理市北をさむ柿選ぶ逸話の心ふとよぎる市川市小松富子脚立に乗り今を男と松手入広島市大村佳光初霜を指で掬ひて空の青天理市中山富貴陽も風も透きて大和路草もみじ横浜市中尾砂江さやさやと風北限の竹の春札幌市田森つとむ掛稲の神に供へる一通り鳥取県野間田芳恵老夫婦つなぐ手柔ら冬木の芽箕面市志賀恵美秋果盛りて献饌楽し遥拝す豊川市菊地美智代多忙といふ子ら見送れば秋思ふと高崎市松田セッ子ペダル踏む初冠雪の峰遠く旭川市藤崎実薬膳の蓮の実美味し丹波の湯和歌山市西澤喜久治電車音天竜川下る水の秋飯田市本島美紀布留川の野仏埋る黄落期橋本市北村薫飛ぶや川の向こうの二人連れ豊岡市柳田栗拾ふ音かさこそと猿の群名張市霧道三明太閤の出城に望む月の海福岡市鎌田秀徳小春呼ぶチェック帽子の三姉妹橿原市東博天気図に急かされ挽ぎる林檎かな岩手県塚本潤一七輪を蔵より出し焼く秋刀魚柳井市富山栄子秋の声座敷童子の住む里に二戸市高屋敷節子頂の見えて霧中や淡路島門真市傳石敏治冬支度柑橘類の皮も干す埼玉県金谷武機音の響く山々紅葉濃し兵庫県藤田千春村おこし人より多き案山子道尼崎市前田禎秋夕焼を仰げば唱歌口をつく桑名市加藤美雪トトロ絵の団栗並べ遊びをり今治市仙波絹子蟷螂の雄の宿命悲しけり名古屋市伊園三郎軽トラの荷台ぎっしり今年米岡山市小橋繁天高しひらり舞うよな鳶の人大阪市羽田野靖男今週の選者詠大綿の触れてはにかむ野の地蔵【評】北さん―秋季大祭が勤められる10月26日は立教ゆかりの日です。親里大路の銀杏並木がとても美しく、一層の感動を覚えたのです。中七の「この日この時」を当日、詠んだことに意義のある佳句です。小松さん―店で美味しそうな柿を選んでいるとき、ふと「稿本天理教教祖伝逸話篇」1.10「柿」のお話が心をよぎったのです。常に教祖をお慕いしている作者なのです。大村さん中七がいいですね。男らしさとしての優しさ、思いやりを「松手入」で発揮した作者です。脚立に上って木鋏を使える健康な身体に感謝して。中山さん初霜の白さは格別です。そっと指で掬って高く掲げると真っ青な空。白と青のコントラストが最高で、初冬の空気を感じます。中尾さん―木の紅葉に対して草もみじも美しく趣のあるものです。日差しも風も透明だと感じた。感受性豊かな作者です。次回は、11月25日までの到着分から選句します。投稿は無地のハガキに俳句3句、または短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号を記載のうえ、楷書でボールペンで書いてください〒632-8686天理郵便局私書箱30号「時報俳壇」または「時報歌壇」係Eメールは[email 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