特別企画 教祖殿新築落成90年【下】
存命の教祖に心を尽くしてお仕え
立教186年1月26日、春季大祭の執行により、教祖140年祭に向かって三年千日と仕切って歩む年祭活動の旬が到来した。この特別企画では、昭和8年(1933年)の教祖殿新築落成奉告祭から、今年で90年の節目を迎えたことを踏まえ、まず【上】(1月4日号)では、存命同様にお仕えしたいという強い決意のもと、教祖殿の新築に力を尽くした先人の思いや普請の歩みを振り返った。続く今号の【下】では、「教祖存命の理」に基づき、教祖殿でどのようなお仕えがなされてきたのかを紹介する。
「教祖に存命同様にお仕えしたい」と願い、ご恩報じを念じて、全教の真実の限りを尽くした教祖殿の新築は、昭和6年6月26日に始まり、2年4カ月をかけて竣工。90年前の8年10月24日午後8時、新築なった教祖殿で厳かに遷座祭が執り行われた。
この遷座祭は、全教のようぼく・信者が心を一つにして「教祖存命の理」を立てきるという思いから、参拝者は教祖殿近くでの参集が許され、神苑一帯は16万を超える人々で埋め尽くされた。
また翌25日には、本部神殿で教祖殿新築落成奉告祭が執行された。
竣工の翌年に初の「教祖誕生祭」執行
昭和9年4月18日には、教祖の136回目の御誕生日をお祝いする「御教祖御誕生祝」が、新築なった教祖殿で初めて行われた。
当日は、本部神殿でかぐら・てをどりが勤められ、次いで中山正善・二代真柱様を先頭に一同、教祖殿へ進んだ。存命の教祖に、お菓子とお茶に続いて、一の膳、二の膳、三の膳と献じられた。
この後、二代真柱様が御誕生日のお悦びの祭詞を奏上。さらに、二代真柱様自ら教祖の御前に膝行して御酌をされた。その際、二代真柱様と共に参進した一同は、教祖から御盃を頂いた。また、教祖には3椀の赤飯、水菓子を献じて、「御教祖御誕生祝」を終えた。
この御誕生祝に先立ち、松村吉太郎本部員は、本部神殿で式典の意義について次のように述べている。
「昨年秋お地場に新教祖殿が落成すると共に、教祖存命の理は益々顕揚せられ、御存命同様にお仕へする道も、明らかに日夜御奉仕申上げて居りますが、此の新殿に於いて最初の御誕生日を迎へるに当り、茲に、管長様の御思召により御教祖御誕生をお祝ひ申し上げる道が樹てられた事は道の者として此の上なき喜びであります」
「お道のお互としても、本日の御誕生日を心から御祝ひ申上げると共に、今日の御誕生日に新たに存命の御教祖を偲び、教祖雛型の道を肝に銘じて当時の熱烈なる信仰に立ち帰らねばならんと考へる」(『みちのとも』昭和9年6月5日)。
教祖御誕生祝が執り行われ、「教祖存命の理」に対する人々の信念はさらに強まり、控える教祖50年祭と立教100年祭の「両年祭」に向かって、全教のようぼく・信者は一層勇み立った。
「教祖存命の理」をもとに設計される
教祖殿の付属建物の内部の設計に当たっては、存命の理に基づいてお仕えすることに重きを置き、幾度となく検討や修正が重ねられた。
松村吉太郎本部員は、当時の『みちのとも』に「朝お起きになればお湯をとつて御洗面所へ御案内申上げ、時間を見計らつて御婦人の事なれば御化粧室へお導きし、それがすめばお居間に招じて、火鉢座蒲團は申す迄もなくお茶の一つもお奨め申上げ、午後五六時になればお風呂も湧かし、九時頃になれば御寝室にお蒲團を布いておやすみして頂くと云ふ風に、この通りに設計せられたのであります」(昭和9年3月5日号)と記している。
教祖存命の理をたたえてお仕えできるようにとの思いで調えられた新教祖殿では、本部婦人や本部員らによって、教祖のお出ましからお休みまで、心尽くしのお仕えがなされた。
当時、教祖殿で教祖にお仕えしていた桝井きよ婦人は「御入浴中もお背中を流させて頂くにつけても定めし肩もこらせておいでますことならん、一寸つかませて頂かうといふやうに、思はせて頂き、御寝み後にも、なるべく静かにおやすみのさまたげにならぬやうにと、御奉仕中は、心の限りをつくして奉仕はさせて頂いております」(『天理時報』昭和8年12月13日号)と、お仕えの様子を語っている。
教祖へのご奉仕いまも変わらず
存命の教祖へのご奉仕は、新築時と変わらず行われている。
教祖は朝づとめ前にご起床遊ばされ、朝づとめ15分前ごろに御殿の東側からお出ましになる。
東の空が明るくなり始めるころ、朝づとめが勤められる。続いて本部員は教祖殿へ参進し、そろって礼拝。一同が祖霊殿へ参進するころ、教祖にお朝食がすすめられる。
“別火別鍋”にて調理したお召し上がりものを膳に並べ、順々に運ばれる。一同が祖霊殿での参拝を終え、再び教祖殿へ戻ると、十二下りのてをどりまなびが始まる。この間、教祖は、まなびの様子をご覧になりながら、お朝食をお召し上がりになる。次いで、お四つには、お居間へご案内し、お菓子やお茶を差し上げる。
午前11時に、お昼食が献じられる。世界中から新鮮な旬の供え物が献じられるため、それらを材料に、献上者の真心がそのまま教祖へ届くようにと、心を込めて調理される。
午後になると、教祖はご入浴のご案内に応じて御殿をお下がりに。すると直ちに、上段のふすまが閉められ、その間に当番本部員らの手によってお掃除が行われる。
教祖がご入浴を終えられると、引き続き、婦人がお八つをおすすめする。その後、教祖は御殿へお戻りになる。
また、おはこびでは、真柱様が教祖の御前でおさづけの理をお渡しくだされ、教会の諸々の願い出に対して、理のお許しを下される事情のおはこびもなしくださる。また教祖殿では、結婚式が執り行われるほか、御用場では「教祖存命の理」を受けて、お守りとをびや許しの下付などが行われる。
お夕食の時刻になると、お昼食と同様にお給仕がなされる。
夕づとめが終わり夜が更けるころ、教祖はご就床のご案内に応じて御寝室へお下がりになる。その間、合殿では当番の本部員らが拝をしてお礼を申し上げ、お見送りをする。御殿は、おやすみと同時にぼんぼりの灯が消され、ふすまが閉まる。
いまも教祖殿では、新築時から変わることなく、存命の教祖へのお仕えが日夜続けられている。