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コロナの経験を糧に生き方を見つめ直し – わたしのクローバー


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2カ月間の入院生活

学生時代、トライアスロンをしていた私は、体力には人一倍、自信がありました。結婚後は仕事と子育てに追われ、体をいたわる時間もありませんでしたが、それでも「健康に気を使うようでは負け」と気を張っていました。

ところが、そんな生き方を大きく変える出来事に遭遇しました。昨年、新型コロナウイルス感染症にかかり、心身の調子を崩して入院することになったのです。

後遺症で、微熱と頭にモヤがかかった状態が続きました。熱が下がっても頭がうまく回らず、焦りと不安から何でも悲観的に考え、家族との関係もぎくしゃくしてしまう。夜、眠れなくなり、体重も減っていきました。

そんな私を心配して、夫は強く入院を勧めました。仕事をしながら家事と4人の子供の世話なんて、夫にはとても無理と思っていましたが、2カ月間の入院中、親戚をはじめ多くの方々に支えていただき、なんとか無事に乗りきってくれました。

病院できちんと薬を飲み、静かに休んでいると、嘘のようによく眠れるのです。栄養バランスの取れた食事を頂いて、体重も少しずつ戻っていきました。

体の調子が良くなると、物事を少しずつ前向きに考えることができるようになりました。何より、日常生活から離れて、自らの生き方を見つめ直すことができたのが、大きな収穫でした。

心と体に余裕を持ち

イラスト・ふじたゆい

入院中、親しくなった年配の患者さんたちと何度もトランプをしました。そのとき、ふと「最近、子供たちとじっくり向き合っていなかったなあ」と思いました。

時間に追われるなかで、常に効率を考えながら暮らしていた私。テレビを見るのも、ご飯を作りながら、洗濯物を干しながら、といった慌ただしさ。そうしたマルチタスクの生活習慣は、体だけでなく、脳にも負担をかけていたようです。

子供たちからは、「お母さんは人の相談に乗る仕事をしているのに、自分の子供の話は全然聞いてくれない」とよく言われました。仕事上の役割と家庭内での姿に、大きな隔たりがあったようです。

更年期は、体力の低下と役割や立場の変化、子供の思春期や親離れなどで心身のバランスを崩しやすい時期――そう人に説いてきた私自身が、体をいたわることや、家族との関係づくりを後回しにしていたことに気づきました。

そういえば、以前はよく、トライアスロンのレース中に足が重くて走れない、自転車を漕いでも前に進まないという夢を見ました。ところが、自分に甘くなり、体に少し脂肪がついてきた近ごろは、不思議とその夢を見なくなりました。

無理をせず、心と体に余裕を持って暮らすこと。長い目で見ると、それが自分にも周囲にも優しい生き方なのだと、身をもって学びました。

いまはこの経験を糧に、臨床心理士として、そして母親としてのこれからの姿を模索しています。


三濱かずゑ(臨床心理士・天理ファミリーネットワーク幹事)
1975年生まれ