“南国の音色”親里に響く ホノルル港教会 – 話題を追って
ハワイの中学校吹奏楽部がおぢばへ
今春、親里では、コロナ禍で長く叶わなかった海外からの帰参が徐々に再開されている。3月中旬にはハワイ・オアフ島から、ホノルル港教会の岩田タッド教司会長(45歳)の引率でカワナナコア中学校吹奏楽部の一行24人(生徒14人、スタッフ6人、保護者4人)が1週間の日程で来訪した。これは「おぢばの素晴らしさを体感すること」「国の違う生徒同士が音楽を通じて交流すること」を目的に実施されたもの。一行は管内学校の学生・生徒や、音楽研究会のメンバーと交流。また、本部神殿南礼拝場前でお供え演奏を行い、春の親里に“南国の音色”を響かせた。
管内音楽クラブと交流 神殿前でお供え演奏も
お供え演奏を控えた3月16日午前10時半、南礼拝場前で楽器を構えるカワナナコア中の生徒14人の表情は真剣そのものだった。準備が整うと、生徒代表のスカイラー・イルデファンソさん(14歳)が、英語と日本語で「どうぞ聴いてください!」と、元気よくあいさつした。
これを合図に、ハワイアン・ソング『カ・ワイレレ・オ・ヌウアヌ』をお供え演奏。雲一つない青空のもと、“南国の音色”を神苑一帯に響かせた。
「こどもおぢばがえり」の体験談がきっかけに
昨年6月、岩田会長が同中吹奏楽部のPTA会長に就任した。
幼少から少年会ハワイ団の鼓笛隊員として「こどもおぢばがえり」に帰参してきた岩田会長は、PTAの最初のミーティングで、「こどもおぢばがえり」における「鼓笛お供演奏」などの体験談を伝えた。すると、同部の指導者やPTA役員が大きな関心を示した。
さらに、おぢばが“人類のふるさと”であることなどを説明したところ、PTA役員の中から「その素晴らしい体験を生徒たちに共有させてやりたい」と声が上がった。岩田会長は、その場で生徒を連れて帰参する心を定めた。
以後、教会を拠点にPTA役員らとおぢば帰りの計画を練り合ったほか、吹奏楽部のファンドレイジング(主に非営利団体が行う、社会をより良くしていくための資金調達手段)として、生徒の保護者や教会の信者の協力のもとバザーを実施。また、本部の海外部や管内学校、音楽研究会などに協力を要請した。
岩田会長は「コロナ禍の影響があるなか、日本行きが無事に叶ったことに、親神様の不思議なお導きを感じた」と振り返る。
アロハスピリットと「ようこそおかえり」
3月13日に来日した一行は、まず本部神殿で参拝。「天理教基礎講座」を受講した。
15日には天理高校第2部吹奏楽部と交流会を持った。この日、初めて顔を合わせた両校の生徒たちは緊張した面持ち。両部の指揮者による通訳を交えた合同練習で互いの音色を重ねていくと、次第に緊張がほぐれ、「いいね!」「エクセレント!」と笑顔で声をかけ合った。
この後、天理高校第2部による『鷲の舞うところ』の演奏に続いて、カワナナコア中が『カ・ワイレレ・オ・ヌウアヌ』を披露。最後に両校生徒が、ハワイの島々や住民への愛と世界平和への願いを伝える曲『カ・ヴァイ・アポ・ラニ』などを合奏した。
カワナナコア中吹奏楽部員の保護者は「初めて音を合わせたとは思えないくらい素晴らしい演奏に、涙が止まらなかった」と感激の面持ちで話した。
16日のお供え演奏後は、天理大学マーチングバンド愛好会との交流会。同愛好会のメンバーがドラムやカラーガードを組み合わせたパフォーマンスを披露。また、同愛好会スタッフによるレクチャーの時間も持たれた。
さらに18日には、天理教音楽研究会のメンバーとワークショップを実施。カワナナコア中吹奏楽部顧問のガイ・ラムさんの指揮のもと、同会のメンバーと共に急遽結成した“国際オーケストラ”が『カ・ヴァイ・アポ・ラニ』を合同演奏した。
ラムさんは「天理の皆さんの音楽への真摯な向き合い方に感銘を受けた。生徒たちも交流会を通じて刺激を受けたようだ。ハワイに戻ってからも、“おぢばでの経験”を生かして指導していきたい」と語った。
◇
交流会やワークショップでは、カワナナコア中の生徒から親里の学生・生徒へ、ハワイの伝統的な首飾り「レイ」が贈られた。この日のために、生徒や保護者らが手作りで準備したという。
一方、親里の学生・生徒たちも、「Welcome to Tenri」と記したボードを用意したり、事前に練習した英語であいさつしたり、さらに学校や防府詰所のスタッフも「ようこそおかえり」の精神で一行を迎えた。
カワナナコア中の生徒の一人、ジャズリン・キノシタさん(12歳)は「詰所の方々をはじめ天理の皆さん方が、嫌な顔一つせず、喜んでサポートしてくださったことに感動した。私の人生の中で忘れられない体験になった」と笑顔を見せた。
岩田会長は「ハワイには『アロハスピリット』という、相手を敬い歓迎する文化があり、親里にも『ようこそおかえり』の“ウェルカムスピリット”がある。この1週間は、愛と喜びと感謝に溢れた日々だった。生徒や保護者は親里での滞在に感激し、また訪れたいと口々に言っていた。これからも、ハワイの人たちを親里へ誘いたい」と語った。
文=久保加津真