ひのきしんスクール講座「高齢者支援」
認知症の基礎知識を学ぶ
厚生労働省によると、65歳以上の認知症患者は約600万人に上り、認知症高齢者への支援が重要になっている。こうしたなか、「ひのきしんスクール」(村田幸喜運営委員長)は先ごろ、講座「高齢者支援」をオンライン開催。「認知症にならないために――いきいき百歳体操の活用」をテーマに、専門家の講義や座談会が行われた。
この講座は、認知症への理解を深めるとともに、認知症高齢者の支援に関する正しい知識と予防法を身に付けることを目的とするもの。
講義では、地域包括支援センター長の中村靖男氏(巢鴨分教会長)が「認知症と介護予防」と題して講義した(下部要旨別掲)。
教会での実践例紹介
続いて、特別養護老人施設相談員の原田正晴氏(髙鹿喜分教会晴喜布教所長)が「認知症の方と向きあう信仰のあり方」をテーマに登壇。認知症では、日常のささいな変化をきっかけに、暴言・暴行、徘徊などの症状が出るとして、支援する際は症状にとらわれず、当事者にとって気分が悪いところを見つけて対処することが大切だと話した。
この後、作業療法士の増田ともえ氏(本部直属典日分教会長後継者夫人)が、3年前から地域の高齢者を対象に教会で実施している「いきいき百歳体操」を紹介した。
平成14年、高知市で開発されたこの体操は、体に重りをつけた参加者が、ビデオを視聴しながら約40分かけて腕や足を動かすもの。
増田氏は「体操によって筋力が向上するだけでなく、高齢者の方々の“通いの場”ができることで会話が増えて、脳が活性化し、認知症予防につながる」と効果を語った。
最後に、3氏が講義内容を掘り下げる形で座談会を行った。
下記URLから、講座の動画を期間限定で視聴することができる。
https://fukyo.tenrikyo.or.jp/top/?page_id=21009
講義要旨 – 運動の習慣化が予防につながる
中村靖男氏 地域包括支援センター長
認知症の相談先として、「地域包括支援センター」がある。これは、地域の高齢者などを対象にした保健医療・介護に関する窓口で、すべての市町村に設置されている。家族が認知症かもしれないと気づいたら、すぐに相談してほしい。
認知症の前段階として、MCI(軽度認知障害)がある。全般的な認知機能は正常であり、日常生活を過ごすうえで問題はないものの、記憶力や判断能力などの認知機能が低下している状態を指す。
この症状を放っておくと、1年以内に約10%が認知症へ移行するといわれる。一方、この状態のうちにうまく対処すれば、16%~41%の人が回復する。認知症になると回復が難しくなるため、MCIの段階でしっかりと予防することが大切である。
WHO(世界保健機関)によると、運動の習慣化、禁煙、アルコール摂取の抑制などの生活習慣病の予防によって、認知症の発症リスクを減らすことができる。
なかでも運動は、認知症予防に効果的だ。運動不足が続くと、身体能力の低下により外出の機会が減る。さらに日常生活の動作にも低下が見られるようになると、認知症を発症しやすくなる。日常的な運動を意識し、介護予防をすることで、結果的に認知症予防につながるのだ。
厚生労働省老健局の冊子には、介護予防のための“通いの場”として神社などが会場例として掲載されている。行政の支援もあるため、教会で「いきいき百歳体操」などを実施し、“通いの場”の役割を担っていただきたい。
「認知症になってボケてしまえば何も分からなくなる」という話をよく聞く。これは大きな間違いで、最初に症状に気づくのは本人だといわれている。実は、当事者が一番不安であり、苦しんでいる。認知症の方の気持ちに少しでも寄り添っていただきたい。