富田直子(69歳・水戸市)
11年前の“あの日”、東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故は、私たち家族の日常を一変させました。
発電所から半径20キロ圏内が「警戒区域」に指定されたことから、私たち家族5人は、福島県南相馬市から茨城県へ避難することになりました。
当初は、新しい土地での生活に慣れるのに精いっぱいでしたが、しばらくして、離れ離れになった故郷の人たちのことが気にかかり、寂しさを募らせる日々を送るようになりました。
そんなとき、友人Aさんの居場所が分かり、はがきを送ったところ、早速Aさんから返事が届きました。そこには、近況報告とともに「つらいけれど一緒に頑張ろう」などと励ましの言葉が添えられていて、「自分は一人じゃない」と実感しました。
以来、Aさんとはがきのやりとりを続け、昨年100通を超えました。思えば、Aさんのはがきから勇気とエネルギーをもらったおかげで、落ち込んでいた気持ちをなんとか前に進めて、今日まで歩むことができたと思います。
積み重なったこのはがきの束は、つらいときこそ互いにたすけ合うことが大切だと教えてくれた、私の宝物です。
いま、感謝の思いも新たに、どんなときも心をつないでくれたAさんと、末永くはがきのやりとりを続けていきたいと思います。