「結晶性知能」を発揮しよう – 視点
2023・6/14号を見る
【AI音声対象記事】
スタンダードプランで視聴できます。
歳を重ねると、誰もが自らの認知機能の低下に気づく。「物忘れが多くなった」「咄嗟の判断がしにくい」など、困った症状が増えてくる。
恥ずかしながら筆者にも、こんなことがあった。腕時計を捜していて、なかなか見つからない。ふと、セーターの袖をめくると右手に着けていた。いつも左手に着けるので右手は見逃していたのだ。
しかし、昔のことはあまり忘れない。ある場所で、子供のころの楽しかった思い出が次々に浮かんできて、懐古的な感傷に浸ったこともある。
心理学では、加齢による知能の変化を「流動性知能」と「結晶性知能」に分けて説明する。流動性知能とは、新しい情報を学習して、素早く処理・応用する能力である。記憶力・計算力・集中力などが該当し、生まれ持った素質なので個人差がある。そして20代をピークに、加齢とともに落ちていく。だから中年期になると、なかなか新しいことが覚えられないのだ。
一方、結晶性知能とは、学習や経験を生活の中で獲得した知能である。言語力や判断力、洞察力、また創造力が当てはまる。つまり人生経験が蓄積して結晶化した知恵である。それは、60代をピークに80代まで持続する。
また、生活の場で発揮しつつ、さらに高めることも可能だ。そのためには、いろいろな人たちと積極的につながりを持つことが必要だという。
「おふでさき」に「それからハにち/\月日みさだめて あとのよふ木゛のもよふばかりを」「それよりもひねた木からたん/\と ていりひきつけあとのもよふを」(第七号18、19)とある。
親神様は陽気ぐらし世界のふしんに必要な人材を樹木に例えられる。一人ひとりの心を見定め、ようぼくとして育てる段取りを急がれる。とりわけ「ひねた木」、つまり樹齢、年限を重ねた木から引き寄せ、ふしんの用材として使うと仰せられる。
ようぼくは齢を重ねても、かしもの・かりもののご守護に感謝し、さまざまな人とコミュニケーションを取り、関わっていきたいものだ。また周囲に悩む人がいれば、十分に話を聴いて、人生で体得した知恵を発揮して悩みの相談に乗る。上手に歳を取るだけ、人と社会の役に立つ才能が培われるのだ。そのことを自覚し、結晶性知能を生かして、人と人をつなぐ機会を生み出すことを心がけたい。
(安藤)