“気がかり”との付き合い方 – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
このエッセーでは、心理学やカウンセリングの観点から人付き合いについて論じてきましたが、私たちが人生で最も長く付き合う相手は誰だと思いますか? それは“自分”です。
私たちは「こんなこと、ずっと考えていてもしょうがないけれど……」と思いつつ、あることが気になって頭から離れなくなるときがあります。また、「何と言えばいいのか分からないけれど、なんだかモヤモヤする」などと、すっきりしない感じを抱くときもあります。私たちが心穏やかに納得のいく人生を歩むためには、そうした自分の内側にある“気がかり”と上手に付き合っていくことが大切です。
たとえば、あなたが「Aさんに嫌われたかもしれない」と気にしていたとします。ここで「私があんなことを言ったから……。そもそも、あれがいけなかったかな。でも、私としては……」などと、あれこれ考えを巡らせると“気がかり”はどんどん大きくなります。
このようなときは、どんな気持ちが心に浮かんできても、「あ〜、そういう気持ちがあるなあ」と、それをただ眺めるようにします。そうした姿勢のままでいるうちに、やがて自分と“気がかり”との間に自然と距離ができてきます。
そうして、ほどよい距離が取れてきたら、あらためて自分の内側に「何が言いたいのかな?」と優しく問いかけて、その“気がかり”が伝えようとしていることに耳を傾けます。そして何かが浮かんできたら、それがしっくりくるかどうか確かめてみます。「嫌われたくない……は、ちょっと違うか。私だって頑張っているのに……かな?」などと、よりぴったりする感じが出てくるのを待ちます。
これをしばらく続けていると、「……分かってほしい? あ〜、そうだ。分かってほしい。うん。私、Aさんに私の考えを分かってほしいんだ」などと腑に落ちる感じがやって来ます。そうして気持ちが整えば、「今度Aさんに会った時に、自分の考えを素直に伝えてみよう」と動き出すこともできます。このように、自分の中の“気がかり”と上手に付き合うことは、他者と良好な関係を築くことにもつながるのです。
自分の中で“気がかり”がまとわりついて離れなかったり、なんだかモヤモヤする感じがあったりするときは、この方法を試してみてください。