娘の声に耳を傾け – 読者のひろば
坂部マキエ(72歳・兵庫県淡路市)
もうずいぶん前のことですが、娘は学生時代から反抗的な態度が長く続いていました。何を言っても冷たい反応が返ってくる毎日に、思い悩んでいました。
ある日、娘がスキー中にけがをし、車いす生活を余儀なくされたのです。突然の出来事に戸惑い落ち込む娘の姿を見て、自分に何かできないかと考えました。
そこで私は、長年勤めた会社を辞め、介護の仕事に就くことに。その中で、たくましく生きる人たちの姿を目の当たりにして、「この方たちと同じように、娘も精いっぱい頑張っている」と気がつきました。また、娘の話を聴かずに一方的に思いを押しつけていたことを反省し、心新たに娘と接していこうと誓いました。
以後、日常生活でまず相手の話に傾聴することを心がけました。娘とも正直に気持ちを打ち明け合い、話に耳を傾けて、励まし続けました。そうするうちに、娘は少しずつ元気を取り戻していきました。
そんなある日、娘が「お母さんが介護の仕事を始めてから気軽に話しやすくなった。ありがとう」と。
うれしいことに、娘はこの春から老人ホームで働き始めました。表情も明るくなり、たわいもない話ができるようにもなりました。これからも相手の声に耳を傾けることを心がけていきたいと思います。