「子供たちを楽しませたい」“人に尽くす喜び”味わう夏 – 密着ルポ 天理高校生の受け入れひのきしん
2023・8/9号を見る
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おぢばに帰ってきた子供たちに最高の思い出を――。今回の「こどもおぢばがえり」でも、各行事会場では天理高校の生徒たちが、子供たちの”お兄さん・お姉さん”として受け入れのひのきしんに当たった。親里で学ぶ高校生が夏のおぢばでひのきしんに勤しむ中で、どんなことを感じたのか――。”かけがえのない学び”を得たという二人の天理高校生の姿を紹介する。
午前8時30分、東泉水プール前広場の「ミラクルアチコチランド」では、天理高校生が会場準備に取りかかる。
その一人、天理高校第1部3年の松﨑貫太さんは、幼少から「おやさとパレード」前にゲームで楽しませてくれた高校生の”お兄さん”に憧れ、「自宅に戻ってからも、そのまねをしていた」という。
天理高校の生徒たちは例年、信条教育の一環として「本部お節会」と「こどもおぢばがえり」のひのきしんをする。ところが、コロナ下になってからは、ひのきしんの機会がなくなっていた。
今年は3年ぶりに「お節会」ひのきしんが再開。「こどもおぢばがえり」のひのきしんは4年ぶりの実施となった。
こまやかな気配りで
午前9時、東講堂南側広場の「こども横丁」では、開場アナウンスが響き、子供たちが続々と会場にやって来る。
「おはよう!どこから来たの?」
子供たちに笑顔で声をかけるのは、辻秋奈さん(第1部3年)。「幼いころ、私もおぢばの”お兄さん・お姉さん”に楽しませてもらった。そのことへの感謝の思いを込めて、子供たちを精いっぱい楽しませたい」と意気込む。
輪投げコーナーで輪をうまく投げられない子供を見つけると、辻さんは「もっと近くで投げていいよ」と優しく声をかける。輪投げが成功すると、「すごい!」と言って子供とハイタッチした。
その後も炎天下で遊び回る子供たちを日影へ誘導するなど、こまやかな気配りを欠かさない。「最初は恥ずかしがる子も、一緒になって喜ぶと笑顔を見せてくれる。まずは私から、楽しい雰囲気を醸し出すことを意識したい」
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「手をつなごうか?ゆっくりでいいからね」
「ミラクルアチコチランド」で丸太渡りに挑戦する子供の両手をしっかりと握る松﨑さん。安全確認をしながら共にゴールを目指す。難易度が高いアトラクションでは、特に安全面に配慮しつつ、子供たちをサポートする。
「子供たち一人ひとりの様子を見て、安全第一に楽しめるよう工夫している。子供たちを喜ばせたい一心で見守っていると、あっという間に時間が過ぎていく」
準備期間に得た気づき
天理高校生のひのきしんは、準備期間の7月15日に始まり、26日までは親里各所の除草や行事会場の設営を手伝う。
初めてひのきしんに当たるなか、辻さんは「かつて、私が”夏のおぢば”を思いきり楽しむことができたのは、見えないところで大勢の人たちが、見守ったり支えたりしてくれたおかげだと気がついた」と話す。
松﨑さんも「子供と直接触れ合うことのない準備期間に、あらためて”人に尽くす喜び”の意味を感じることができた。本期間では、子供が喜ぶことを何からでもさせてもらおうと思った」と口をそろえる。
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笑顔を絶やさず、目線を合わせることなどを意識して子供と接し続けた松﨑さん。将来の夢は「学校の先生」。「ひのきしんを通じて、今後の人生のうえに掛けがえのない経験ができた。これからも”人に尽くす喜び”を忘れずに、夢を追いかけたい」
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順番待ちをする子供たちが退屈しないよう笑顔で話しかけていた辻さん。コロナ下の高校生活3年間の最後に経験した、夏のひのきしんを通じて”ある思い”を抱いたという。
「子供たちが最高の夏の思い出を持ち帰ることができたら、今度は、その子たちがスタッフとして次の子供たちを楽しませようとする。この”感謝のバトン”を私も渡せたのなら、とてもうれしい」
(文・写真=加見理一、久保加津真)