不登校の子供と家族への支援を考える – ひのきしんスクール講座「家族への支援」から
2024・3/13号を見る
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「ひのきしんスクール」(村田幸喜運営委員長)は、2月26日午後から27日にかけて、講座「家族への支援」をおやさとやかた東左第4棟で開催。「不登校――子供の事情を通して」をテーマに、専門家による講義などが行われた。
これは、不登校の現状を理解するとともに、子供の事情を通して家族がどのように成人の道を歩むことができるかを考えるもの。
初日は、天理大学教授で同大学院臨床人間学研究科長の千原雅代氏が「不登校について考える」をテーマに講義。不登校の子供の割合は年々増えており、小・中学生では約32人に一人が不登校に該当することなどを説明したうえで、「不登校の支援においては心の安心・安全を育むために、“共感的理解”をもって、子供だけでなく保護者も支援する必要がある」と話した。
この後、NPO法人「みんなの教室」代表の髙部春菜氏(本部直属安東分教会ようぼく)が登壇。「不登校の子どもの気持ちとその親への寄り添い」をテーマに講義した(要旨別掲)。
自ら動く瞬間見逃さず
二日目は、内山真太朗氏(田主丸分教会長)と市村千恵氏(小牧大教会教人)が、それぞれ体験発表。続いて、髙部、内山、市村のパネリスト3氏が参加者の質問に答える形で、パネルディスカッションが行われた。
その中で「不登校の子供を待つ間に焦りが募る。どうすればいいか」との質問に対して、市村氏は「焦って行動を起こすのではなく、会話などの些細なやりとりを通じて子供の変化を感じ取ることが大事。子供が自ら動きだす瞬間を見逃さないでほしい」と話した。
また「不登校の子供や親を支援する際の心構えは」と問われた内山氏は、「支援者として自分がたすけているのではなく、あくまで教祖の手足となっておたすけをしていると常に意識することが大切。その思いで、これからも支援に携わっていきたい」と語った。
講義要旨
子供の居場所づくりに
髙部春菜氏
大分県別府市で初となるフリースクールの代表を務める傍ら、全国各地で講演活動をしている。
中学2年生のとき、小学校教諭を目指すようになり、大学卒業後に小学校で6年間勤めた。
その中で、不登校の子供たちと出会った。不登校の要因は、無気力や生活リズムの変化、友人関係などとされるが、その実態は一人ひとりさまざま。一方で、そうした子供たちには共通して「居場所がない」という問題があった。
そこで「子供たちの居場所をつくろう」と思い立ち、教員を辞めて、フリースクール「みんなの教室」を設立した。
フリースクールとは、学習活動、教育相談、体験活動などを行う民間施設で、子供の社会的自立を目標にしている。平成28年に公布された「教育機会確保法」で、行政と民間団体の連携、学校以外の教育・休養のルールが整備され、学校復帰だけではない不登校支援のあり方が示されている。
「みんなの教室」は、「子供たちの居場所をつくる」「子供たち一人ひとりに寄り添い、一緒に学び成長する」を教育理念とし、「別府市のすべての子供たちを幸せにする」ことを目標に掲げ、活動している。
その中で、子供が“やってみたいこと”を体験できる環境づくりを心がけるとともに、子供たちに向き合うときは、一人ひとりに寄り添うこと、伴走することを大切にしている。
私自身、5カ月ほど前に出産を経験した。つらいこともあったが、それでも子供は可愛く、笑ったり、寝返りをうったり、どんなことをしても“すごい”と思える。
しかし、学校へ行けない子供たちの現状に目を向けると、何かができなくてもすごいはずの子供が、期待に押しつぶされそうになっている。
生きているだけで素晴らしい子供たちのために、何かやりたいことがあれば一緒になって支えるサポートに努め、これからも子供の居場所づくりを教会や地域で続けていきたい。
下記から過去に天理時報で取り上げた髙部さんの記事を読むことができます。
https://doyusha.jp/jiho-plus/pdf/20240313_hinosc.pdf