一人ひとりを大切に慈しむ – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
私は大学で教師を目指す学生に「生徒指導」について教えています。生徒指導というと、「問題を起こした生徒を罰する」というイメージが強いかもしれませんが、本来の目的は、生徒の「自己指導能力」を育成することにあります。
自己指導能力とは、このとき、この場で、どの行動が正しいか、自分で判断して実行する力です。選択する行動が正しいかどうかは、「自分も他者も大切にできているか」「自分のためにもなり、人々のためにもなるのか」を基準にして判断します。
この自己指導能力を育成するための要点は次の三つです。これは教師に限らず、青少年育成の指針となりますので、それぞれの立場で参考にしてください。
1.子供に自己存在感を与える。
「○○ができるからすごい」「○○であることに意味がある」などと子供の存在価値に条件を付けるのではなく、子供が「私は大切にされている」と実感できるように、その子の存在そのものを慈しむ。
2.共感的な人間関係を育成する。
一人ひとりが異なることを知り、その違いを認め合いながら、互いを大切にして、共に居られる関係を育む。
3.自己決定の場を与える。
大人があれこれ指図するのではなく、子供がさまざまなことに主体的に取り組めるような場を与える。
なお、子供の選択や決定の結果として、さまざまな不都合や危険が予想される場合、大人は助言をためらう必要はありません。ただし、その場合も、子供と一緒に考えるという「対話」の姿勢を大切にします。
この 1.自己存在感 2.共感的な人間関係 3.自己決定 の三つは相互に関係しています。まずは、私たち一人ひとりが目の前にいる子供一人ひとりを大切に慈しむことから始めましょう。
「自分は大切にされている」と実感できる子供は、他者を同じように大切にします。そうした関係が広がっていく中で、「自分も他者も大切にする」「自分のためにもなり、人々のためにもなる」ということを基準にして、自分の行動を決定できる人が育っていくのです。
そうした一人ひとりの心がけが”陽気ぐらし”につながっていくと思います。