「琉球古文書」を修復・公開 – 天理図書館
2024・4/17号を見る
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首里城復元の根拠資料として活用
天理図書館(安藤正治館長)は、4月16日から特別公開「琉球古文書――修理事業完了記念」を同館2階展示室で開催する。これは、古文書の修理事業の完了を記念し、同館が所蔵する「琉球古文書」資料を初めて一般公開するもの。修復された資料の一部は、現在進捗中の首里城復元の根拠資料の一つとなっている。ここでは、特別公開の内容を紹介するとともに、琉球漆器の専門家である金城聡子氏(浦添市美術館学芸員)に、「琉球古文書」資料の内容などについて話を聞いた。
琉球王国時代の資料は、明治政府による王国の解体後、戦争などの影響で大部分が焼失し、残存数が希少なため、その歴史や文化の多くが謎のベールに包まれている。現在も多くの有識者や研究者が、琉球王国史の解明に向けて研究を進めている。
天理図書館は、1961年に古書店から「琉球古文書」約350点を購入したが、虫食いや汚損など状態が悪かったため、一般に広く公開してこなかった。
こうしたなか、金城聡子氏が「琉球王国史に関連する資料が天理図書館にある」との情報を得、2019年の首里城焼失直後に同館を訪問。古文書の現存を確認し、これらの資料が琉球王国史の研究を進めるうえで非常に高い重要性があることを同館へ伝えた。
以後、琉球王国の歴史と文化の研究の重要性に鑑み、金城氏の協力や朝日新聞文化財団の助成ならびに個人の寄付により、同館が修理事業を進めた。
同書の中には、首里城復元において、正殿の中枢エリアである玉座の板壁などが、平成復元時の「黄色塗装(黄色塗り)」から茶系色の「黄塗り」へと大きく変更される根拠の一つとなった「御道具図并入目料帳」もある。
今展では、古文書の修理事業の完了を記念し、同館が所蔵する18~19世紀の「琉球古文書」資料群から、幾多の災禍を免れて今日に伝存する琉球王国の行政文書を中心に、5点を初めて一般公開する。このほか、琉球王国の生活文化を記した「琉球談」など、琉球関連の資料11点も併せて展示する。
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なお、今回の特別公開に先立ち、同館が修復した古文書の内容が、沖縄の地方紙『琉球新報』4月6日号で紹介された。
また昨年11月には、金山雄大・本部直属淀分教会長の案内のもと、金城氏と沖縄県立芸術大学名誉教授・安里進氏が親里を訪問。同館で修復中の古文書の状況について報告を受けた後、天理参考館を見学し、本部神殿を訪れた。
《開催要項》
会期…4月16日から20日まで
開館時間…午前9時30分~午後3時30分
会場…天理図書館2階展示室
※閲覧無料
琉球王国史研究の新たなステージへ
金城聡子氏・浦添市美術館学芸員
このたび修復された「琉球古文書」資料群は、今後の琉球王国史の実相解明において欠かすことができない、大変貴重な資料です。天理図書館の皆さまに心より御礼を申し上げます。
特に注目なのは、漆器の図や詳細な琉球漆器製作に関する情報が収録されている仕様書「御道具図并入目料帳」です。京都大学所蔵の「琉球資料」を約100年さかのぼる情報が記された文書もあり、これまでの漆器に関わる研究を一気に進展させ得る、まさに一級の資料です。
また、同書から漆器に関わる情報を詳細に読み解くことで、現在進捗中の首里城復元に際し、18世紀当時に殿内に設置されていた漆器はもちろん、内外壁に使われた塗料の色や技法に限りなく近づけて復元することができると思います。
さらに同書には、琉球の独特な用語も記されているため、漆器や塗料だけでなく、琉球王国の歴史・文化を解明する一助となることが期待されます。
今回「琉球古文書」資料群が修復されたことが契機となり、琉球王国史の研究は新たなステージへと進みます。今後も天理図書館と協力し、「御道具図并入目料帳」をはじめとした「琉球古文書」資料群の調査・研究を推し進め、琉球王国史の謎に迫っていければと思っています。