“自然と共生する町”づくりへ 天理高校理研部 環境保全に寄与 – 話題を追って
2024・4/17号を見る
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環境省「功労者表彰」受賞
天理高校理研部は先ごろ、環境省が実施する「令和5年度大気・水・土壌環境保全活動功労者表彰」を受けた。これは、大気・水・土壌環境の保全に関して顕著な功績のあった団体や個人の功績を讃えるもの。同部は、環境市民ネットワーク天理、天理市環境連絡協議会などと連携し、「布留川生物学的調査・ホタル飛翔数調査」「街路樹(イチョウ)の健康度調査」を長年続けてきた功績が評価された。
昭和48年から布留川の水質調査を行っている同部。特定の場所から採取した水の状態を4段階に分け、経年変化を観察してきた。
さらに平成26年からは、水質の指標生物であるホタルの飛翔数調査も開始。天理市役所を中心とする半径1.5キロの範囲で、夜間のホタルの飛翔数を目視する観測を続けた。
こうしたなか、水質が高い水準にあるにもかかわらず、ホタルの飛翔数が28年ごろを境に減少。街路灯の明かりの強さがホタル減少の要因の一つと考えられたことから、飛翔時期に合わせた消灯管理、人感ライトの導入などホタルと共生する町づくりの提言を行った。
一方、19年からは天理市の市木イチョウが街路樹として植えられている親里大路などで、地元NPO「環境市民ネットワーク天理」と連携して大規模な街路樹の健康度調査を開始。数年ごとにイチョウ約1千本の葉や幹、萌芽の状態を記録するとともに、落ち葉の堆肥化の研究にも携わってきた。
その中で、イチョウ並木を剪定する際に、果樹などに用いられる「透かし剪定」(主幹主枝から出てくる大きな枝を根本から切り払いつつ、樹形を維持する剪定)を提案。導入後、イチョウ並木の樹形が整うようになり、現在、親里大路は晩秋に大勢の人々が訪れる観光スポットとして親しまれている。
また、落ち葉堆肥化の研究で堆肥としての効果が確認されると、部員主導で「奇跡のミカン・プロジェクト」を立ち上げ、市内の耕作放棄地を活用したミカンの無農薬栽培に挑戦。同プロジェクトは、高校生のエコ活動を競う「エコワングランプリ」で表彰された。
これらの成果を、「天理市民環境展」や一般市民向けの「まほろばエコロジー展」で発表してきた。
地道なデータ収集を続け
同部では、放課後や長期休みの期間に、地道に調査を継続。先輩部員が長年蓄積してきたデータをもとに、現役の部員同士が話し合って調査結果をまとめていく。
同部のスローガンは「Think Globally Act Locally」。国際的視野を持ちつつ、地域で活動することをモットーにしている。
在学中、水質調査や街路樹の健康度調査に携わったOGの實延美彩さん(23歳)は「先輩が蓄積したデータを、次の世代が引き継いでいくところが面白い。長期にわたる作業では、部員が交代で作業しながら、互いにたすけ合い、楽しんで進めることができた」と話す。
現在、新たな活動として園芸部や軟式野球部と合同で、山の辺の道沿いの里山の景観保全にも努めている。
指導に当たる川波太・同部顧問は「歴代の生徒や顧問が時間をかけて地道に調査・研究に取り組んできたからこそ、このような評価が受けられたと思う。今後も天理市の環境保全に向けた提言を続け、“自然と共生する町”のモデルケースとなるように貢献していきたい」と語った。
文=高田悠希
理研部の「奇跡のミカン・プロジェクト」の話題を取り上げた過去記事は下記URLから
https://doyusha.jp/jiho-plus/pdf/20240417_riken.pdf