廃寺の桜と世紀の美女 – 山の辺の道 心の景
天理駅から南東へ約3キロの里山に、かつて「西の日光(東照宮)」と呼ばれた大伽藍があった。寺の名は内山永久寺。創建は平安時代の永久年間。「永く久しくあれ」、そんな未来がこの名に託されたことだろう。
ところが明治の初め、廃仏毀釈によって跡形もなく消えてしまった。いまは庭の池だけが、往時の名残を留めている。
寺には後醍醐天皇や豊臣秀吉など、多くの著名人が訪れた。また、世紀の美女・小野小町の晩年の木像が、この寺から流出している。その姿は、彼女が桜に自分を重ねて詠んだとされる『百人一首』の歌以上に切ない。「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに (桜は長雨にむなしく色あせてしまった。そして私も……)」
ここを訪れるのは、桜の季節がお勧め。「小町もこの道を歩いたのかな?」などと空想しながら、散策するのも楽しい。
(J)
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