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「母の日」のプレゼント – 心に効くおはなし


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子どもたちは毎日、数えきれないくらいお母さんを呼びます。「行ってきます」の代わりに「おかあさーん」、「ただいま」の代わりに「おかあさーん」という具合です。

ある年の三月、高校入学が決まった夏子を里子として迎えました。多感な年齢で、ただでさえ難しい年ごろ。加えて背も高く、体格も良く、スポーツが得意で、腕力も強い子でした。

幼い子どもたちは、受託後すぐに、ぼくたちのことをごく自然に「おとうさん、おかあさん」と呼びますが、高校生になる彼女は、そうはいきません。夏子はぼくたちのことを、いつも小さな声で「おじちゃん、おばちゃん」と呼びました。

そんな夏子が、数カ月たったころに迎えた「母の日」に、「おばちゃん」にプレゼントを手渡しました。「ありがとう……」と言って。「おばちゃん」の目からは、ポトポトと大粒の涙がこぼれ落ち、小さな「おばちゃん」が大きな夏子を、「ありがとう」と言って抱きしめました。

そばにいたぼくも目頭が熱くなりましたが、夏子が「ありがとう」のあとに小さな声でつぶやいた「……」が、ぼくには「おかあさん」と聞こえたような気がしました。夏子にとっては初めての「母の日」のプレゼントだったのかもしれません。

袋のなかには数枚のクッキーが入っていました。「おかあさん」は、いつまでもそれが食べられず、キッチンのガラスケースに飾っていたのです。


(2014年・道友社刊)

『家族を紡いで』

白熊繁一著(天理教中千住分教会長)

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