宝剣小狐丸と布留の里の女 – 山の辺の道 心の景
秋の風物詩「彼岸花」には、多くの別名がある。曼殊沙華、龍爪花。ほかに狐の松明、狐花など。狐といえば、童話『ごんぎつね』には、墓地に咲く彼岸花が印象的に描かれている。村人の兵十と狐のごんの切ない物語は、多くの人の心を摑んできた。
天理にも、狐にまつわる昔話がある。ある時、布留の里の女が狐の親子に出くわした。弱った子狐に女の乳を分けてほしいという。女が頼みを聞いてやると、狐は一振りの刀を女に贈った。刀は「小狐丸」と名づけられた。同じころ、大蛇が現れて人々を困らせていた。女は小狐丸で大蛇に挑み、見事退治してしまった。村人は大いに喜び、女はこの刀を石上神宮に奉納したという。
この後日譚が、いかにもこの土地らしい。幕末のころ、小狐丸は何者かに盗まれた。古墳の盗掘犯が祟りを避ける守り刀にしていたという。その後、刀は再び神宮に戻り、いまも宝物庫に保管されている。
(J)
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