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女の子の「五秒の礼」- 心に効くおはなし


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ある日の朝、天理小学校の子供たち数人が、信号のない横断歩道を渡ろうとしていました。通勤・通学の時間帯なので車の量は多く、なかなか停まってくれません。しばらくして、ようやく一台の車が停まり、子供たちは急いで道路を渡りました。

渡り終えた子供たちは、参拝のために、そのまま神殿へ向かって歩き出しました。そのとき、一人の女の子が立ち止まって車道を振り返り、停まってくれた車を探しはじめたのです。そして、先へ進んでいる車を見つけると、時間にして五秒ほど、深々と頭を下げたのでした。

横断歩道は歩行者優先ですから、車は停まって当然だと思っている人は多いでしょう。なかには「もっと早く停まってよ」と言わんばかりに車を睨みつけながら渡る人もいる。それなのに、この子は偉いなあと、心洗われる思いがしたのです。

車の運転手は、女の子が礼をしていることに、おそらく気づかなかったでしょう。しかし、そんなことはお構いなしに頭を下げ続ける女の子の姿は、きっと、後続の運転手の目に留まったに違いありません。そのなかには、「この次は私も停まってあげよう」という気持ちになった人もいると思います。

この女の子の五秒の礼には、「通してくれてありがとうございます」という感謝の気持ちだけでなく、「運転手さんの一日が幸せでありますように」といった祈りも込められているように、私は感じました。

(2017年・道友社刊)

『朝の信仰読本――こころ澄ます教話集』

中山慶純著(天理教本部員)

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