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“更生の道”は愛情弁当から – 心に効くおはなし


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補導受託者として非行少年たちを預かるなかで、大きな役割を果たしているのが妻の久子だ。連れ添って四十五年の妻を、私をはじめ少年たちは、愛情を込めて「久子さん」と呼んでいる。

少年たちは委託中、仕事に就いて職業指導を受ける。久子さんは毎朝、少年が仕事に向かう際に「食べるときには教会の家族の顔を思い出してね」と言葉を添え、手作りの“スタミナ弁当”を持たせている。文字通り母親代わりとして、少年たちを見守ってくれているのだ。この久子さんの存在が、少年たちの立ち直りを支えている。

彼らの非行の背景には、家庭環境に問題があることが多い。

ある少年は、父が医師、母が教職員という家庭で育った。両親は、なぜ子供が非行に走ったのか分からない。私も当初は、少年の非行の原因が分からなかった。

少年は、しばらく教会にいるなかで、私の長男の嫁と久子さんが実の親子に見えるほど仲の良いことが「不思議で仕方ない」と話した。それをきっかけに、次のことが分かった。少年の母親と姑の関係が悪く、家庭に安らぎの場がなかったこと。そして、それが遠因となって非行に走ったこと――。

久子さんの弁当が、生涯初めての手作り弁当という少年も多い。彼らは、教会で久子さんとふれ合ったり、手作り弁当から愛情を感じたりして、更生のきっかけをつかんでいくのだと思う。

『非行少年の心の居場所――補導委託30年』

大畑道雄著(天理教本導分教会長)

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