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古墳と水鳥の深い関係とは? – 山の辺の道 心の景


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撮影場所:天理市柳本町
Photo by Hideharu

ある冬の夕方、崇神天皇陵を訪ねた。ここから見る夕景は美しい。やがて夕日が空と堀の水面を黄金色に染めて、黒々とした古墳の森を浮かび上がらせた。そのとき、悠々と泳ぐ水鳥の群れを見つけた。

古墳と水鳥には、深いつながりがある。発掘調査で、水鳥形の埴輪が多数見つかっているのだ。鳥形の埴輪には、主に鶏形と水鳥形があり、鶏形は朝日の象徴、水鳥形は魂と関わりがあると考えられている。

空を自由に飛ぶ鳥は古来、世界の至るところで、この世とあの世をつなぐものとされてきた。『日本書紀』にも、現在の三重県で葬られた日本武尊の魂が「白鳥と化りたまひて、陵より出で、倭国を指して飛びたまふ」とある。古代の人々は、水鳥の埴輪に死者の魂を託したのだろうか……。

そんな思いを巡らせていたら、この景色が不思議に見えてきた。山の辺の道では、いつも時の流れを忘れてしまう。

(J)


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