おやのことば・おやのこころ(2022年8月3日号)
だん/\になにかの事もみへてくる
「おふでさき」四号22
いかなるみちもみなたのしめよ
先日、ひょんなことからカブトムシの成虫を1匹譲ってもらいました。飼育ケースに入れて持ち帰ると、初めて実物を見た子供たちは、立派なツノの動きに興味津々の様子です。
ふと、小学生のころの思い出がよみがえってきました。ある夏の朝、玄関のそばをヨチヨチと歩くクマゼミの幼虫を見つけたのです。父が適当な太さの枝を拾ってきて、幼虫と一緒に飼育ケースに入れてくれました。枝につかまった幼虫が脱皮し、数時間かけて羽化していく様子を夢中になって観察したのを覚えています。
思えば、セミは一生のほとんどを真っ暗な地中で過ごします。カブトムシやチョウのように、成虫になる直前にサナギの時期を迎える昆虫もいます。いずれも、外見的な変化には乏しいものの、虫たちの成長や繁殖に不可欠なプロセスであることは言うまでもありません。
私たちの人生においても、折々の節に直面し、時に光が見えなくなることがあります。その中も心は明るく、じっと力を蓄えていれば、いずれ視界が開けたときに、羽化を終えた成虫が空へ大きく羽ばたくように、暗中模索の日々が自分を成長させてくれたことに気づくはずです。どんな苦境の中も、先を楽しみに通る心を忘れずにいたいものです。
教会の玄関を出ると、神殿の軒下にセミの抜け殻がくっついていました。今年の夏は、子供たちと昆虫採集に出かけてみましょう。
(榊)