弔問外交こそ停戦の好機 – グローバルアイ15
凶弾に斃れた安倍晋三元総理の国葬が9月27日に行われることが閣議で決まった。吉田茂氏以来、国家が費用のすべてを負担して葬儀を営むのは久々である。中国が力による攻勢を強めるなか、東アジアの要衝、ニッポンにあって存在感を示してきた安倍氏が突然逝ってしまった――国際社会は深い喪失感を抱いている。それゆえ、各国から多くの要人が列席する見通しだ。
筆者はロシア軍のウクライナ侵攻の直後から、安倍氏こそ調停役を担うキーパーソンだと指摘してきた。プーチン大統領と27回も会談し、ゼレンスキー大統領の後ろ盾であるバイデン大統領からも篤い信頼を得てきた政治指導者は他に見当たらない。賛否が渦巻くなかでの国葬だが、安倍氏の政治的な遺産を停戦のために生かし、この葬儀をウクライナに平和を取り戻す好機とすべきだろう。
いまのところプーチン大統領は出席しない意向だが、日本側はモスクワの出方を息を潜めて見守っている。だが、ここは参列を積極的に働きかけるべきだろう。プーチン大統領が東京にやってくれば、ゼレンスキー大統領もこの好機を逃すまい。弔問外交が東京を舞台に繰り広げられれば、バイデン大統領も姿を見せるにちがいない。東京は久々に新たな歴史を創りだす舞台となるだろう。果たして弔問外交が実を結ぶか定かではないと慎重論が日本国内からも聞こえてくる。
だが、東アジアを代表する経済大国ニッポンが行動しなければ、中国の習近平主席がその間隙を埋めて調停に乗り出してくるかもしれない。習近平調停が成ってしまえば、その権威はいや増しに高まり、台湾を併合する素地が整ってしまう懸念が出てくる。ウクライナの戦火はやんでも、日本列島には烈風が吹きつけてくるだろう。
それゆえ、弔問外交を通じて、ウクライナの停戦を実現させることは、アジア全域にとって、ひいては全世界にとって価値あるチャレンジとなる。“死せる安倍氏、生けるプーチン、ゼレンスキー両氏を走らす”――そう願ってやまない。