“稔りへの祈り”に真実を込め – おやさと瑞穂の記 その5
おやしきの北東には、教祖のご在世当時の風景を彷彿させる豊かな田園風景が広がり、親神様にお供えするお米が昔ながらの方法で栽培されている。今回は「稔りへの祈り」について紹介する。
8月中旬を過ぎたころ、稲は青々と勢いよく伸びた葉の中から穂を出し、下旬にはその穂先に清楚なお米の花が咲きはじめた。
稲は晴れた日の午前中に開花する。まだ緑色の籾から雌しべが伸び、雄しべの花粉が風に運ばれて、雌しべに受粉する。稲穂に付いているすべての籾が受粉するまでに1週間ほどかかる。開花時の適温は30度で、その間に雨などの天候の変化で気温が下がると花粉の受精能力が落ちて、お米の稔りが悪くなってしまう。この時期の天候が、お米の出来の良し悪しに影響するという。
教会本部管財部の担当者・森本孝一さんによると、おやさとの今年の夏は天候が比較的安定しており、稲の受粉も順調とのこと。しかし9月は台風シーズンなので、まだまだ油断はできない。これからの順調で豊かな稔りを祈るばかりだ。
ただ、森本さんの話によると、この時期の脅威は天候だけではない。なかでも注意しなければならないのが害虫による被害だ。
稲の害となる生物には、カメムシやイナゴ、ツトムシ、タニシ、ウンカなどがあるが、その中で最も注意を要するのがウンカだ。ウンカは、稲の葉や茎から汁を吸って枯らす。また、繁殖力が強いので、ひどい場合は田んぼを全滅させることもある恐ろしい害虫だ。江戸時代の大飢饉を引き起こした原因の一つともいわれている。
ウンカは毎年、西の大陸から気流に乗ってやって来る。実は2年前、このウンカによって日本のお米づくりは大きな被害に遭い、大和も例外ではなかった。
そのときの様子について、森本さんは「2年前のウンカの被害はひどかったですね。あのときは、さすがに農薬を使わないといけないかと考えましたが、ふと周りの田んぼを見ると、農薬で防除しても被害が止まっていなかったんです。そこで、もう少し様子を見ていたら、この田んぼではウンカの天敵となるクモが大繁殖し、ウンカを食べて被害を抑えてくれていることが分かりました。そのときは自然の力の有り難さを、ありありと感じました」と語った。
田んぼに害を与える虫もいれば、同時に害虫を退治する「益虫」もいる。農薬を使っていなかったことで益虫の力が発揮されたのだ。とはいえ、今年どうなるかは、まだ分からない。やはり無事を祈るしかない。
明治8年、教祖は、かんろだいのつとめの手一通りを整えられ、続いて十一通りのつとめを教えられた。その中でも、六通りのつとめは、「肥のつとめ」「萌出のつとめ」「虫払のつとめ」「雨乞ひつとめ」「雨あづけのつとめ」「みのりのつとめ」の立毛、すなわち農作物に関するつとめである。お米づくりの困難や脅威を知るほどに、人間の力の及ばないところを護ってやりたいとの親神様の親心を感じずにはおれない。
今月は、おつとめに真実の心を込め、豊かな稔りとともに、無事に収穫できるようお願いしたい。
(文=諸井道隆)
下記URLから、「おやさと瑞穂の記」の過去記事を見ることができます
https://doyusha.jp/jiho-plus/pdf/oyasato_mizuho.pdf